JX金属が開発した3D成形可能な電磁波シールド材が農業用ドローンで採用:オートモーティブワールド2024
JX金属は、「オートモーティブワールド2024」に出展し、3D成形可能な電磁波シールド材「Mighty Shield」と「ハイブリッドシールド」を披露した。
JX金属は、「オートモーティブワールド2024」(2024年1月24〜26日、東京ビッグサイト)の「第16回 カーエレクトロニクス技術展」に出展し、3D成形可能な電磁波シールド材「Mighty Shield」と「ハイブリッドシールド」を披露した。
農業用ドローンでMighty Shieldを採用
2023年末に発売されたMighty Shieldは、樹脂フィルムと銅箔で構成されているシート材で、基材側となる樹脂と一体成形することにより電磁波シールド性能を持つ筐体を作れる。この筐体は軽量なため、電子部品を格納する金属製の筐体と置き換えて使用することで対象の製品を軽くできる。銅箔と樹脂の特殊構成により高い放熱性も実現しているので、筐体内外からの熱を素早く拡散させて局所的な熱の滞留を抑制する機能も備えている。
さらに、低周波(kHz帯)〜高周波領域の磁界ノイズや電界ノイズの両方を同時にシールド可能な他、対象の製品形状に合わせたシールドケースの作製に対応し、さまざまなインサート樹脂との一体成形にも応じる。
同社がKEC(関西電子工業振興センター)法によりMighty Shieldのシールド性能を測定した結果、500kHz以上の周波数帯域で30デシベル(dB)以上の磁界シールド効果を示すことが分かっている。さらに、100k〜100MHzの周波数領域で樹脂筐体とMighty Shieldの筐体のシールド性能を比較評価した。
その結果、樹脂筐体では電界ノイズと磁界ノイズの漏れを確かめた。一方、Mighty Shieldを用いたシールドケースでは高い磁界シールドと電界シールドの性能を有することを確認した。
用途としては、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHEV)、ドローン、医療機器、電子機器/通信機器に搭載される各種電子部品の金属製あるいは樹脂製シールドケースの置き換えなどを想定している。
JX金属のブース説明員は「Mighty Shieldは電磁波シールド性が評価され、ナイルワークス製の農業用ドローンに搭載されている、電子部品を格納する筐体の素材に採用されている」と話す。
ハイブリッドシールドは、磁性材料と銅箔を組み合わせた開発中のシールド材で、Mighty Shieldより低周波の電磁波を防げる。Mighty Shieldと同様に樹脂と一体成形することで筐体を作れる。併せて、格納する電子部品の形状に合わせて立体成形が可能だ。JX金属のブース説明員は「ハイブリッドシールドは磁性材料を含んでいるが賦形しやすい」と利点を語った。用途としては、自動車やEVに搭載するインバーターや電子制御ユニット(ECU)の筐体の素材として利用されることを想定している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 日立市に半導体用スパッタリングターゲットと圧延銅箔の生産工場を新設
JX金属は、茨城県日立市に、半導体用スパッタリングターゲットと圧延銅箔の生産工場を新設する。今後見込まれる市場拡大と大幅な需要増加に対応するため、2020年度比でそれぞれ約80%と25%の生産能力増強を図る。 - 軽量で磁界/電界ノイズのシールド性に優れる新たなシート
JX金属は、「TECHNO-FRONTIER 2023(テクノフロンティア2023)」(2023年7月26〜28日、東京ビッグサイト)で、開発中の「電磁波シールドシート」と微細配線形成できる「プリンテッドエレクトロニクス」を紹介した。 - 半導体用先端素材向け工場を茨城県に建設、JX金属が2000億円規模の投資で
JX金属は2022年3月16日、茨城県ひたちなか市に新工場建設用大規模用地の取得を行ったと発表した。新工場では、半導体用スパッタリングターゲットや圧延銅箔、高機能銅合金条などの既存成長分野に加え、結晶材料など先端素材関連新規事業向けの中核拠点としての役割も持たせる計画だ。 - JX金属がブラジル・Mibra鉱山でタンタル精鉱を生産、TANIOBISが優先的に買い受け
JX金属は、ブラジルのMibra鉱山におけるタンタル原料生産事業へ参画する。Mibra鉱山で産出される鉱石からタンタル精鉱を生産し、JX金属グループのTANIOBISが優先的に買い受ける予定だ。 - 光センシング技術の高度化に貢献する材料のマーケティングを本格化
JX金属は、茨城大学工学部と共同研究を推進しているケイ化マグネシウム単結晶の社会実装に向けてマーケティング活動を本格化する。 - 高機能箔製品の需要拡大に向け、新型仕上げ圧延機と脱脂設備を導入
JX金属は、倉見工場に新型の仕上げ圧延機と脱脂設備を導入する。同工場で主に生産している高機能箔製品の需要拡大に向けて生産能力を増強し、同製品のさらなる安定供給を図る。