光センシング技術の高度化に貢献する材料のマーケティングを本格化:材料技術
JX金属は、茨城大学工学部と共同研究を推進しているケイ化マグネシウム単結晶の社会実装に向けてマーケティング活動を本格化する。
JX金属は2023年6月26日、光センシング技術の高度化に貢献する新規半導体デバイス向け材料であるケイ化マグネシウム(以下、Mg2Si)単結晶の社会実装に向けてマーケティング活動を本格化すると発表した。展示会での出展を通じた認知向上や、赤外線検出器などの半導体デバイスの生産/開発を行うメーカーとのコミュニケーションを進め、採用の可能性があるアプリケーションの探索や、事業計画の具体化を進めていく。
Mg2Siは、可視光線(VIS)から近赤外線(NIR)、短波赤外線(SWIR)までの幅広い波長領域が検出できる半導体材料で、各種光センサー向けの活用が期待できる。また、熱電材料としても高い性能を示すことから、次世代の熱電変換材料としても注目されている。
マーケティング活動本格化の経緯
近年、グローバル規模での社会のデジタル化の進展を背景に、自動車の自動運転、医療、防災/セキュリティ、食品検査といった幅広い分野で光センシング技術の発展が進んでいる。これらの光センシング技術には、可視光線のみならず赤外線を含めた幅広い波長の光を電気信号に変換するために半導体基板が使用されている。今後の多様な分野での光センシングデバイス活用のために、多様な技術開発が進められているが、幅広い波長領域の検出性能とコストパフォーマンスの両立が普及の課題とされいてる。
一方、茨城大学工学部 教授の鵜殿治彦氏が研究開発に取り組んでいるMg2Si単結晶は、可視光線から短波赤外線までの幅広い波長領域の光を検出可能であり、遍在性の高い材料を用いているため、性能とコストパフォーマンスを両立する材料として、産業用途のみならず民生用途も含めた幅広い分野で適用が期待されている。
JX金属はは2019年より茨城大学工学部と同製品の共同研究に取り組んでいたが、「2023-2025年度中期経営計画」における結晶材料事業領域の規模拡大を目指す方針の下で、同製品の事業化に向けたステップを一段上げ、潜在顧客とのコミュニケーションを通じて事業性の判断に資する情報収集を進めていくこととした。なお、並行して茨城大学とは、同製品の早期社会実装に不可欠なインゴットの大型化などの技術開発を進め、同中計期間半ばにサンプル出荷を行うことを目指している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 半導体用先端素材向け工場を茨城県に建設、JX金属が2000億円規模の投資で
JX金属は2022年3月16日、茨城県ひたちなか市に新工場建設用大規模用地の取得を行ったと発表した。新工場では、半導体用スパッタリングターゲットや圧延銅箔、高機能銅合金条などの既存成長分野に加え、結晶材料など先端素材関連新規事業向けの中核拠点としての役割も持たせる計画だ。 - 日立市に半導体用スパッタリングターゲットと圧延銅箔の生産工場を新設
JX金属は、茨城県日立市に、半導体用スパッタリングターゲットと圧延銅箔の生産工場を新設する。今後見込まれる市場拡大と大幅な需要増加に対応するため、2020年度比でそれぞれ約80%と25%の生産能力増強を図る。 - リチウムイオン電池の再生材料をさらにもう1度リサイクル、ドイツが産学連携で研究
フォルクスワーゲン(VW)は電動車の駆動用リチウムイオン電池を複数回リサイクルするプロジェクトを開始したと発表した。使用済みのバッテリーから回収した電極材料や電解質、黒鉛を適切に処理し、再びバッテリーで使用するのに適した品質を確保することで、クローズドループリサイクルを長期的に維持することを目指す。 - JX金属がブラジル・Mibra鉱山でタンタル精鉱を生産、TANIOBISが優先的に買い受け
JX金属は、ブラジルのMibra鉱山におけるタンタル原料生産事業へ参画する。Mibra鉱山で産出される鉱石からタンタル精鉱を生産し、JX金属グループのTANIOBISが優先的に買い受ける予定だ。 - 点ではなく線を活用、有害ガスの漏出を早期検知できる光センシング技術
NECは「Embedded Technology 2017」「IoT Technology 2017」で、有害ガスの漏出などを早期検知できる光センシング技術を紹介した。同技術は「ET/IoT Technologyアワード」において「Embedded Technology優秀賞」を受賞している。 - 貼り付けるだけで水溶液濃度を計測できる光センサーシートを開発
中央大学らの共同研究グループは、貼り付けるだけで水溶液濃度のオンサイト計測が可能な光センサーシートを開発した。植物や柔らかな素材の液体配管に貼り付けられ、伸長した状態でも安定して多機能な光センシングを実施できる。