貼り付けるだけで水溶液濃度を計測できる光センサーシートを開発:組み込み開発ニュース
中央大学らの共同研究グループは、貼り付けるだけで水溶液濃度のオンサイト計測が可能な光センサーシートを開発した。植物や柔らかな素材の液体配管に貼り付けられ、伸長した状態でも安定して多機能な光センシングを実施できる。
中央大学は2022年5月12日、貼り付けるだけで、水溶液濃度のオンサイト計測が可能な光センサーシートを開発したと発表した。東京工業大学、大阪大学、産業技術総合研究所、オランダのアイントホーフェン工科大学らとの共同研究グループによる成果だ。
同シートは、CNT(カーボンナノチューブ)薄膜と高分子成分を含む薄膜支持基板、読み出し電極で構成されており、植物や蛇腹管、塩化ビニールパイプ、ゴムチューブなど柔らかな素材の液体配管に貼り付けられる。
CNT薄膜の特性により、室温でミリ波からテラヘルツ波、赤外線まで広帯域にわたる光を検出可能だ。70〜280%伸長した状態でも、安定して多機能な光センシングを実施できる。
また、さまざまな配管に貼り付けることで、内部の液体が発する赤外線放射(黒体輻射)を検出できる。今回の実験では、溶媒からの黒体輻射が部分的に溶質に吸収されることを確認し、センサーシートが検出した信号の減衰強度をもとに溶質の量(水溶液濃度)を計測できた。グルコースを用いた例では、血中や農作物の濃度レンジに相当する50〜2万mg/dLの水溶液濃度計測レンジを達成している。
他に、液流の温度や粘度の非破壊モニタリング、センサーシートの無線式遠隔操作が可能。同シートの活用例として、飲料品製造現場や化学合成プラント、生理食塩水を使用する医療現場などでの品質管理が想定される。
研究グループは今後、素子性能や測定手法をさらに改善することで、濃度計測対象となる化合物の選択性を実証し、生活排水や産業排水、動植物などの体内栄養素といった複数化合物を含む液流を対象としたオンサイトモニタリングに生かしていく。
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