ウェアラブルデバイスの皮膚用粘着剤、AGCがウレタンで新提案:ウェアラブルEXPO
AGCは「第8回ウェアラブルEXPO」において、パッチ型ウェアラブルデバイスなどに最適な皮膚用ウレタン粘着剤を展示。従来のシリコーンやアクリルなどの材料と比べて、皮膚が蒸れにくく、抗菌性を有し、長期間の貼り付けでも皮膚ダメージが少ないことが特徴で、フレキシブル基板として回路を形成することもできる。
AGCは、「第8回ウェアラブルEXPO」(2022年1月19〜21日、東京ビッグサイト)において、パッチ型ウェアラブルデバイスなどに最適な皮膚用ウレタン粘着剤を展示した。従来のシリコーンやアクリルなどの材料と比べて、皮膚が蒸れにくく、抗菌性を有し、長期間の貼り付けでも皮膚ダメージが少ないことが特徴で、フレキシブル基板として回路を形成することもできる。
糖尿病患者の血糖管理をサポートする持続血糖測定器(CGM)をはじめ、パッチ型のウェアラブルデバイスの開発が進められている。これらのパッチ型ウェアラブルデバイスは、デバイスをしっかりと保持する一方で、長期間貼り付けることになる皮膚へのダメージをできるだけ少なくしたいという要望がある。
AGCが開発した皮膚用ウレタン粘着剤は4つの特徴がある。1つ目は高い透湿度だ。皮膚からの湿度を逃がして蒸れを抑えることで肌への適度な粘着力を維持できる。透湿度は、市販品のシリコーンの3倍以上、市販のアクリルの6倍以上を実現した。
2つ目は粘着力のバランスである。パッチ型ウェアラブルデバイスに用いる粘着剤では、デバイスに対してはしっかりと保持できるような強い粘着力が必要だが、皮膚に対してはダメージを与えないような適度な粘着力が求められる。一般的なシリコーンやアクリルは、デバイスのパッケージに用いられる樹脂と皮膚のどちらに対しても同じレベルの粘着力になるが、皮膚用ウレタン粘着剤は樹脂への強い粘着力と、皮膚への適度な粘着力を両立した。
3つ目は抗菌性で、貼り付けた皮膚表面での細菌増殖を抑制する機能を備えている。実際に、黄色ブドウ球菌と大腸菌を99.9%減少させる実証結果を得たという。4つ目の特徴となる安全性では、肌へのパッチテストとアレルギーテストで問題を起こさないことを確認している。
これらの特徴によって良好な長期貼り付け性も実現できている。皮膚用ウレタン粘着剤を貼り付けた状態で、仕事やシャワー、睡眠などの日常生活を過ごしたところ、14日間以上の貼り付けが可能なことを確認した。この長期貼り付けで、皮膚の赤身やかゆみ、角質剥離が発生しにくいことも分かった。
さらに、パッチ型ウェアラブルデバイスだけではなく、電源をはじめさまざまな回路との組み合わせで実現するウェアラブルデバイス向けの展開も見据えている。展示デモでは、開発した皮膚用ウレタン粘着剤を用いた粘着テープ上に電子回路を形成することで、フレキシブル回路基板として利用可能なことも示した。「今回の出展を機に、この皮膚用ウレタン粘着剤の活用を検討する顧客との接点を広げ、実証に向けたサンプル提供を進めていきたい」(AGCの説明員)としている。
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