アマゾン買収断念で再び苦難に直面するアイロボット 大規模リストラも決行:製造マネジメントニュース
Amazon.comは家庭用掃除ロボット「ルンバ」を手掛けるiRobotの買収に向けた両社の契約終了に合意したと発表した。EUの規制当局による買収の許可を得られなかったとしている。
Amazon.com(アマゾン)は2024年1月29日(米国現地時間)、家庭用掃除ロボット「ルンバ(Roomba)」を手掛けるiRobot(アイロボット)の買収に向けた両社の契約終了に合意したと発表した。EU(欧州連合)の規制当局による買収の許可を得られなかったとしている。
アマゾンによるアイロボットの買収計画は2022年8月に発表された。買収金額は約17億ドル(当時の為替レートで約2300億円)で、全て現金による取引となる予定だった。
当時のアイロボットは、半導体不足の影響により自社製品を市場に十分供給できず、さらにウクライナ侵攻の影響で欧州市場の売り上げが減少するなどの影響を受けていた。加えて、急激なインフレによって北米市場で注文キャンセルが相次ぐなどの要因が重なり、2021年度に赤字転落して以降、業績改善が課題となっていた。
アマゾンとアイロボットは、事前に合意していた契約解除料の支払い(約9400万ドル)など、生じ得る主だった問題解決に向けた解除契約を締結したとしている。
買収を断念する要因となったEUの規制当局の判断について、アマゾンでSVP and General Counselを務めるDavid Zapolsky氏は「この結果は、消費者の生活をより簡単で楽しいものにするだろうと私たちが確信している、より早期のイノベーションと競争力のある価格を否定するものだ。(中略)不当で不釣り合いな規制のハードルは、買収を成功への道の1つと見なす起業家の意欲を削ぎ、規制当局が守ろうとしている消費者と市場競争の双方を傷つける」(ニュースリリースより)とコメントを出した。
一方で契約解除のニュースリリースと共に、アイロボットは大規模な解雇を含むリストラ計画を発表した。従業員の約3割に当たる350人の大部分を2024年3月30日までにレイオフする。アイロボットの2023年の収益は8億9100万ドル(約1312億円)で、前年比で25%減少した。
さらに、同社の共同創業者でCEOのColin Angle氏の辞任も発表した。同社でCLO(最高法務責任者)を務めるGlen Weinstein氏が暫定的にCEOに就任する。
Angle氏は「アマゾンとの契約解除は残念だが、アイロボットは生活をより良くして世界中のお客様に愛される、思慮深いロボットとインテリジェントホームのイノベーションを作り続けることに集中し、コミットメントする未来へと向かう」(ニュースリリースより)とコメントした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- iRobotは床だけでなく空気もきれいに、ルンバと自動連携する空気清浄機を発売
アイロボットジャパンは、ロボット掃除機の新製品「ルンバ コンボ j9+」など4機種とともに、新規事業として日本市場で先行発売する空気清浄機「Klaara(クラーラ) p7 Pro」を発表した。 - 「iRobot OS」でソフトウェアシフトを明確化したルンバ、便利機能を拡張しやすく
アイロボットジャパンは、掃き掃除と拭き掃除の両方の機能を兼ね備えた家庭用清掃ロボット「ルンバ コンボ j7+」を同年11月11日から販売すると発表した。同時に「iRobot Genius」として展開してきたソフトウェアベースのホームインテリジェンスを「iRobot OS」と改め、家庭の情報を複数の家電で共有して活用できるようなソフトウェアプラットフォームとしての位置付けに進化させていく方向性を示した。 - 品質確認の時間も短縮、ルンバも使ったクラウドシミュレーターの可能性とは
クラウドを活用してロボットの開発や運用、管理を行うクラウドロボティクス。連載第2回ではAWSのシニアアーキテクトがクラウドシミュレーターの種類や活用方法の紹介を行う。 - ルンバの仕事が終わったら自動で拭き掃除開始、ブラーバジェットの旗艦モデル登場
アイロボットジャパンは2019年7月23日、東京都内で記者会見を開き、床拭きロボットのフラグシップモデル「ブラーバジェットm6」を発表した。 - 「ルンバ」のiRobotが軍事部門を売却、家庭用ロボットに注力
掃除ロボット「ルンバ」を開発する米iRobotが、軍事開発部門を4500万ドル(約52億円)で売却。家庭用ロボットに注力する。 - 猫が乗っても迷わない、“ルンバ史上最強”「980」は何がスゴいのか
ロボット掃除機の代名詞的な存在となった「ルンバ」に最新モデル「980」が追加された。シリーズとして初めて自己位置推定を行う「SLAM」技術を搭載した、ハイエンドモデルの詳細に迫る。猫が乗っても大丈夫。