苦境のアイロボットをアマゾンが救う、17億ドルで買収へ:製造マネジメントニュース
米国のアマゾン(Amazon.com)と掃除ロボット「ルンバ(Roomba)」などを手掛けるアイロボット(iRobot)は、アマゾンがアイロボットを買収することを発表した。買収金額は約17億米ドル(約2300億円)で、今後アイロボットの株主や規制当局の承認などを経て買収を完了する計画だ。
米国のアマゾン(Amazon.com)と掃除ロボット「ルンバ(Roomba)」などを手掛けるアイロボット(iRobot)は2022年8月5日(現地時間)、アマゾンがアイロボットを買収することを発表した。買収金額は約17億米ドル(約2300億円)で、今後アイロボットの株主や規制当局の承認などを経て買収を完了する計画だ。
アマゾンはアイロボットの株式を1株当たり61米ドルで買収する予定。買収金額の約17億米ドルにはアイロボットの純負債も含まれており、全額を現金で取引することになる。また、現在のアイロボット 会長兼CEOのコリン・アングル(Colin Angle)氏は、買収完了後もアイロボットのCEOにとどまるという。
アイロボットは同日、2022年度第2四半期(4〜6月期)の決算を発表している。2022年度上期(1〜6月期)累計の売上高は前年同期比19%減の5億4730万米ドル、GAAPベースの営業損益は同9050万米ドル悪化の8720万米ドルの赤字だった。2021年後半から半導体不足の影響によって十分に製品を出荷できない中で、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で欧州市場の売り上げが減少した上、足元では急激なインフレにより北米市場で注文のキャンセルが相次ぐなどして業績を押し下げた。
2021年度の通期業績で売上高が前年度比16%減の45億5400万米ドル、GAAPベースの営業損益で同1億4740万米ドル悪化の110万米ドルの赤字に転落して以降、業績悪化に歯止めがかかっていない。収益改善に向けて、非中核のエンジニアリング機能の低コスト地域への移転やJDM(共同設計製造)パートナーの活用、グローバル拠点の整理といった施策を中核とするコスト削減計画を進めており、2022年に約500万〜1000万米ドル、2023年に約3000万〜4000万米ドルの削減効果を想定している。社員数についても、2022年7月2日の時点で全社員の約10%に当たる140人を削減したという。
買収後のアイロボットは、アマゾンで電子書籍リーダーやタブレット端末、スマートスピーカーなどのハードウェア製品を開発するアマゾンデバイス(Amazon Devices)の傘下に加わる見込みだ。アイロボットの共同創設者の1人であるアングル氏は「アマゾンは、人々が家庭でより多くのことを行えるようにするためのイノベーションを構築するというアイロボットの情熱を共有しており、われわれのチームがミッションを継続していく上でこれ以上のところはないと考えている。私自身がアマゾンの一員となり、これからの数年間で顧客のためにどのようなものを一緒に作り上げられるのか、大いに期待している」とコメントしている。
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