「iRobot OS」でソフトウェアシフトを明確化したルンバ、便利機能を拡張しやすく:組み込み開発ニュース
アイロボットジャパンは、掃き掃除と拭き掃除の両方の機能を兼ね備えた家庭用清掃ロボット「ルンバ コンボ j7+」を同年11月11日から販売すると発表した。同時に「iRobot Genius」として展開してきたソフトウェアベースのホームインテリジェンスを「iRobot OS」と改め、家庭の情報を複数の家電で共有して活用できるようなソフトウェアプラットフォームとしての位置付けに進化させていく方向性を示した。
アイロボットジャパンは2022年11月1日、新製品プレス発表会を開催し、掃き掃除と拭き掃除の両方の機能を兼ね備えた家庭用清掃ロボット「ルンバ コンボ j7+」を同年11月11日から販売すると発表した。同時に「iRobot Genius」として展開してきたソフトウェアベースのホームインテリジェンスを「iRobot OS」と改め、家庭の情報を複数の家電で共有して活用できるようなソフトウェアプラットフォームとしての位置付けに進化させていく方向性を示した。
「未来を作る人間」に生まれ変わった
2022年は、アイロボット(iRobot)が最初にロボット掃除機「ルンバ(Roomba)」(2002年発売)を発売してから20周年となる。今では家庭用ロボット販売台数4000万台を突破するなど、ロボット掃除機を中心に家庭用ロボットの市場を切り開いてきた。
オンラインで米国から発表会に参加した、アイロボットの創業者で会長兼CEOのコリン・アングル(Colin Angle)氏は、20年の歴史の中で印象的な出来事について、最初のルンバをニューヨークでテックレポーターに披露した際のエピソードを紹介した。
アングル氏はロボットの研究者でアイロボット設立後もさまざまなロボット技術の紹介をしてきた(アイロボットは1990年創業)。ただ、それらは実用的なロボットではなかったため、ルンバを紹介してもテックレポーターたちは懐疑的な姿勢だったという。ただ、持ってきたシリアルを袋からばらまき、靴ですりつぶして、ルンバに掃除をさせた。その様子を見て、テックレポーターたちの表情が一気に変わったという。アングル氏は「レポーターたちは歴史が変わる瞬間に立ち会っているかもしれないと反応が変わった。それが私が『未来を語る人間』から卒業し『未来を作る人間』に生まれ変わった瞬間だった」と振り返っている。
その20周年の節目に新たに2つの発表を行った。1つは、掃き掃除と拭き掃除の両方の機能を兼ね備えた家庭用清掃ロボット「ルンバ コンボ j7+」だ。
掃除機と水拭き機能を搭載
パッドリフティングシステムで、モップパッドを天面に移動する様子。アーム部分は細く見えるが根本も含めて金属性で「ラグなどに引っ掛かった場合などでも通常は壊れることはない」(担当者)としている[クリックで拡大]
「ルンバ コンボ j7+」は掃除機と水拭き機能を搭載した、アイロボットが初めて国内市場に提供する2in1モデルだ。ルンバに水拭き機能を追加し、1台のロボット掃除機で両方を実現する。また、ラグやじゅうたんを判別しこれらのエリアで吸引を行う際には、水拭き用のモップパッドをルンバの天面まで持ち上げて格納するアイロボット独自の「パッドリフティングシステム」を搭載。いちいち手作業での変形や設定変更なしに、通常の床面での水拭き掃除から、じゅうたんを濡らさずに吸引掃除に移行できる。洗濯が可能なモップパッドは、取り付け部が持ち上がるので、ロボット本体を裏返さずに片手で簡単に交換可能。ダスト容器と水拭き用のタンクは一体型で、手入れのしやすさにも配慮している。
また、ロボット前面に搭載されたカメラにより、目の前にあるコードやペットの排泄(はいせつ)物などの障害物をリアルタイムに識別して回避、散らかった床でも掃除することができる「PrecisionVision ナビゲーション」を搭載。清掃中に障害物が見つかると、清掃終了後に「iRobot Home アプリ」にその画像を表示し、これらの障害物に今後どのように対処すべきかをフィードバックできる。既に同アプリに接続するコネクテッドロボットは世界で1300万台もあり、世界中のユーザーからのフィードバックを学習し、進化させられる点も特徴だ。
認識し回避できる障害物は、2022年11月1日現在で、コードやケーブル、ヘッドフォン、ペットの排泄物、靴やスリッパ、靴下、衣服、布地、リュックサック、ペットの食器、猫用トイレ、ペットのおもちゃ(ボールやロープなど)、クリスマスツリーだという。公式オンラインストアの価格で15万9800円で発売する。
アイロボット製品共通のプラットフォームを構築
もう1つの発表が「iRobot OS」である。これは、ホームインテリジェンス機能である「iRobot Genius」をアップデートし、これらの進化を支えるソフトウェアベースの仕組みをOSと位置付けるものだ。アイロボットが提唱する「使う人に寄り添い、ライフスタイルや好みに合わせた清掃体験を提案するAI」を具現化し、各製品から得られたデータを活用しつつ、iRobot Homeアプリを通して個々のユーザーに便利な機能を提供する。
アングル氏は「PC端末も初期は重要なのはハードウェアだったが、今ではソフトウェア中心の世界に変わってきている。スマートフォン端末もOSをどうするかを考えずに選ぶことはできない。掃除機も同様にソフトウェア中心へとシフトが進む」と考えを述べている。ハードウェアのつながる先にあるクラウド基盤上にこれらの機器から得られる活用可能なデータとその分析結果などを知見として活用し、機能として各機器をアップデートする仕組みを実現する。こうした一連の仕組みを構築し、掃除機以外の家電などでも共通のプラットフォームとしていく考えだ。
アイロボットジャパン マーケティング本部 プロダクト&マーケットストラテジー部 部長の山内洋氏は「まずはロボット掃除機が中心だが、海外では他の家電製品も扱っているので、アイロボット内でのさまざまな家電製品でも共通の基盤として活用できるようにしていく。その後は、まだ具体的な計画はないが、他社の家電製品などとも接続できるようにすることも可能性としてはあると考えている」と方向性について述べている。
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