AI活用で深刻化する人手不足に対応、アーモンドの外観検査への導入事例:製造現場向けAI技術(2/2 ページ)
倉庫業などを営む富士倉庫では、サービスの一環で行っているアーモンドの選別用として、AI外観検査装置の導入に踏み切った。導入に至った背景やその手応え、今後の展望などを富士倉庫および装置を開発したロビットに聞いた。
ニーズに応じて選定基準を変更、不良品のデータを可視化
AI自体のアーモンドに対する学習はサンプルなどを基にロビット側で行って納入するが、異常の分類や異常の程度による選別基準を設定することができるため、顧客ごとの要求に合わせて歩留まりの最適化が可能となる。
ここでいうアーモンドの選別基準は、そのまま食されるテーブルナッツ用から加工用に至るまで多岐にわたって設定される。
黒江氏は「落花生向けに色彩選別機を導入したことはあったが、AIの学習は初めての経験だった。人間の目で見て良い悪いと選別していたものを、AIに学習させるために、基準に対してどれくらい悪いのかまで明確にする必要があった。これまでも選別基準は設けていたが、判断が難しいものは人によって対応が分かれており、それらを形式知化しなけれならず時間がかかった」と振り返る。
ロビット 事業企画本部 セールス&マーケティングの臼井彰太氏は「いわば“アーモンドとは何か”というAIのプラットフォームを提供するのがわれわれで、ユーザー側で求める基準になるように独自のノウハウや知見をAIに反映できるような仕組みになっている。今回、不良品のレベル分けをやっていただいたことで、メーカーら顧客の要望に応じてどこまでを良品にするかなどをAIで設定できるようになった」と語る。
現在は顧客の要望に応じて装置を使用しており、直接的な省人化につながったわけではないが、人手不足への対応の準備を進めることができた。また、TESRAY Gシリーズの導入により、仕入れ品のアーモンドにどんな不良がどれくらいあったかがデータとして見えるようになった。富士倉庫 営業部 選別事業課 課長の橋本慎平氏は「さまざまなテクノロジーを駆使して、安心安全をお客さまに届けたい」と話す。
富士倉庫では今後、国内における選別作業のニーズの高まりを見込んでいる。新興国などの経済成長で食品原材料調達の国際競争は激化している。また、これまで人件費の安い第3国で選別作業が行われるケースもあったが、現地の人件費は上昇しており、同じ仕組みがいつまでも利用できるとは限らない。“日本品質”を実現するために、国内で質の高い選別を行う必要が出てくる。
黒江氏はTESRAY Gシリーズについて、アーモンド以外のナッツ類への展開も期待する。臼井氏は「指先から手のひらサイズで大量に流れてくるものには対応できると考えており、アーモンド以外のナッツ類への適用も期待できる。また、カット野菜など生鮮食品の選別にも対象を広げていきたい」と意気込む。
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