エンバリオの環境配慮型バリューチェーン、インドの漁網をスマホ材料に:オートモーティブワールド2024
Envaliorの日本法人であるエンバリオジャパンは、「オートモーティブワールド2024」に出展し、バイオプラスチックやリサイクルプラスチックの製造で活用している環境配慮型バリューチェーンについて紹介した。
エンジニアリングプラスチック会社Envalior(エンバリオ)の日本法人であるエンバリオジャパンは、「オートモーティブワールド2024」(2024年1月24〜26日、東京ビッグサイト)の「第10回 自動車部品&加工EXPO」に出展し、エンバリオがバイオプラスチックやリサイクルプラスチックの製造で活用している環境配慮型バリューチェーンについて紹介した。なお、エンバリオジャパンの展示会出展は今回が初となる。
強みは品質保証を独自に行う点
エンバリオは、オランダのDSM Engineering Materialsと、ドイツのLANXESS high performance Materialsという2大エンジニアリングプラスチック会社が統合し、2023年4月に発足した企業だ。
環境配慮型バリューチェーンでは、混合樹脂あるいは単一樹脂の廃棄物を原料にリサイクルプラスチックコンパウンドの生産に対応する他、主にひまし油を原料に用いたバイオプラスチックの製造にも応じている。
混合樹脂のリサイクルでは、熱分解し油にした上で混合を行い、熱分解変換を経てモノマーとした後、重合してプラスチックコンパウンドにするケミカルリサイクルを採用している。
単一樹脂のリサイクルでは、ケミカルリサイクルに加え、洗浄と粉砕によりプラスチックコンパウンドにするメカニカルリサイクルにも対応している。
一例を挙げると、インドで利用されている漁網のメカニカルリサイクルがある。エンバリオジャパンの説明員は「ナイロン6製のこの漁網は、インド洋で漁を行う際に利用されており、使用後に廃棄されている。一部は海洋に不法投棄されウミガメなどの海洋生物に悪影響を与えている。そこで、エンバリオでは、協力会社が回収したその漁網をメカニカルリサイクルでナイロン6のポリマーとして再生している」と話す。
このモノマーは「Akulon RePurposed(アクロン リパーパスド、以下RePurposed)」という商標で販売されている。エンバリオジャパンの説明員は「RePurposedと他のエンジニアリングプラスチック会社が販売しているリサイクルナイロンポリマーの大きな違いは、品質保証をエンバリオが独自に行っている点だ」と強調する。
既にRePurposedは、サーフボードやSamsung製スマートフォン「Galaxy S22」の部品の材料として採用されている。さらに、英国の配線資材メーカーであるHellermannTyton(ヘラマンタイトン)が製造するワイヤハーネスのクリップにも採用。このワイヤハーネスはフォード・モーターの自動車「フォード・ブロンコ・スポーツ(2022年モデル)」に導入されている。
バイオプラスチックの製造では、ひまし油などを原料とした植物由来のナフサと石油由来のナフサを混合させるマスバランシングを行った後、熱分解変換でモノマーとした上で重合によりプラスチックコンパウンドとする手法を採用している。さらに、バイオマスを化学変換させバイオベースのモノマーとした上で重合によりプラスチックコンパウンドとする方法にも対応している。
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