半導体洗浄に欠かせない製品を供給、原材料高などの逆風下でも業績を向上:材料技術
ドイツの特殊化学品メーカー、ランクセスの日本法人は2022年11月29日、東京都内で記者会見を開き、現在の市場環境や今後の注力分野について説明した。
ドイツの特殊化学品メーカー、ランクセスの日本法人は2022年11月29日、東京都内で記者会見を開き、現在の市場環境や今後の注力分野について説明した。
エネルギー、原材料コスト上昇も売り上げ増
2022年1〜9月のグローバルの売上高は前年同期比38%増の61億ユーロだった。物質保護剤や液体高純化テクノロジーズのコンシューマープロテクション、ポリマーアディティブスなどのスペシャリティアディティブス、工業化学品などのアドバンスト中間体という全てのセグメントで業績が向上した。
エネルギーや物流、原材料価格などの高騰に見舞われたが、「価格転嫁により対応することができた」(日本法人 代表取締役社長 ジャック・ペレズ氏)。
地域別では南北のアメリカで31%、ドイツで17%、ドイツを除く欧州、中東、アフリカで30%、アジア太平洋で22%という割合になっている。2022年1〜9月の日本における売上高は前年同期比30%以上の伸びを示しているという。
ペレズ氏は「日本事業はランクセス全体の売上の中で3%以上を占めている。日本は成長市場であり、GDP規模や化学産業の大きさを考えてもランクセスにとって重要な市場だ」と話した。
ランクセスは事業ポートフォリオの転換を進めており、2023年には化学品分野に多数の投資実績を持つ投資会社アドベントインターナショナルと高機能プラスチックの合弁会社を設立する予定で、自動車産業向けに高性能ポリマーを提供してきたハイパフォーマンスマテリアルズビジネスユニットを移管する。
他にも、2018年に合成ゴムの合弁会社アランセオをサウジアラビア国営石油会社のサウジアラムコに売却しており、売却前は20%あった自動車向けが売上高に占める割合は現在10%以下だという。「われわれは大きな投資が必要で競争の激しい分野から、真の意味での特殊化学品ビジネスに移行しており、コンシューマープロテクションの事業にシフトしている」(ペレズ氏)。
日本で重要な位置を占める半導体向け事業
ランクセスは液体の高純化製品における世界有数のサプライヤーでもある。水に含まれる不純物を取り除く同社のイオン交換樹脂は、半導体やマイクロエレクトロニクス、ディスプレイ、太陽電池の洗浄工程に用いる超純水の製造や、工場排水からリチウムやニッケル、コバルト、銅などバッテリーの材料となる金属の抽出などにも使用されている。
ランクセス 液体高純化テクノロジーズビジネスユニット 日本統括マネジャーの村上直弘氏は「東アジアでは半導体向けの事業が重要な位置を占めており、それは日本の事業でも同様だ。半導体洗浄用の超純水は、東京ドーム一杯分の水に角砂糖1つくらいが許容範囲といわれている。この超純水用のイオン交換樹脂を作れるのはわれわれ含めて世界でも一部の企業に限られる。ただ、技術は日進月歩で進化しており、それに伴ってわれわれもより高い品質が求められている」と語る。
コロナ禍のデジタル機器需要や米中の対立などで深刻化した半導体不足も、今後は調整局面に入るといわれている。村上氏は「足元ではそのような兆しもあるが、中長期で見れば半導体の需要は底堅いものがあり、われわれ含めてイオン交換樹脂のメーカーは新製品開発への投資を進めている」と語る。
2022年11月には、従来の石油由来ではなく植物由来などの再生可能原料を90%以上使用し、従来製品よりもカーボンフットプリントを最大67%削減したイオン交換樹脂の新製品「レバチット スコープブルー」を投入している。同製品は家庭用、業務用の浄水フィルターなどが主な用途で、コーヒーなどの飲料向けに軟水化した水を生成する。
ランクセスは2050年までにサプライチェーン全体でのクライメイトニュートラル(気候中立)を目指しており、持続可能な原料への切り替えを進めている。カーボンニュートラルが二酸化炭素などを主としているのに対して、クライメイトニュートラルはメタンやフロンなど温室効果ガス全てを含めた考え方になる。
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