2025年の有機トランジスタ世界市場は1800億円に、2045年には10.9倍に成長:製造マネジメントニュース
矢野経済研究所は、次世代有機デバイスの世界市場を調査し、有機トランジスタにおける世界市場規模の予想を発表した。2025年の同市場は1800億円に拡大し、2045年には2025年対比で10.9倍となる1兆9690億円の成長を見込む。
矢野経済研究所は2023年12月19日、次世代有機デバイスの世界市場を対象に行った調査の結果として、有機トランジスタ(OFET、Organic Field Effect Transistor)における世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)の予想を発表した。2025年の同市場は1800億円に拡大し、2045年には2025年比で10.9倍となる1兆9690億円の成長を見込む。
調査は2023年5〜10月に、有機トランジスタ関連の技術研究機関、生産販売あるいは取扱企業などを対象に行われた。
2025年のデバイス需要分野別では、ディスプレイ駆動が最大で全体の59.4%を占める。バイオセンサー13.9%、化学センサー11.1%、その他15.6%がそれに続く。無機系にはない優れた特性を持つ有機デバイスの将来見通しは明るい。
有機トランジスタは、有機半導体を活性層に使用して電流をコントロールするFETだ。シリコン(Si)に代表される無機材料を用いた無機系半導体は、微細化に限界がある。一方、それに遅れて市場に登場した有機半導体は、無機系にはない優れた特徴を持つ。
有機トランジスタでは、無機材料と比較して多大な種類の材料を使用できる。さらに、有機分子の設計自由度、幅広い膜構造可能性、多くの作製プロセスなどの優れた特性を持つ。こうした特徴を活用し、バイオセンサーやフレキシブル電子デバイスなどのディスプレイ駆動、RFIDなどの無線タグ(情報タグ)、高性能モバイル端末の集積回路など応用分野向けの開発進展が期待できる。
また、有機トランジスタの開発では、応答周波数として世界最速の38MHzの達成が確認されている。物流管理などで使用するRFIDタグの通信周波数13.56MHzより大きく、無線タグの給電に十分応用できる。加えて、超短波帯は、FMラジオ放送やアマチュア無線などの電波として活用されており、将来的に応答周波数が増えることで、超短波帯を使った長距離無線通信を可能とする有機集積回路の開発が期待できる。
有機トランジスタは、容易な印刷プロセスで量産化できるため、今後のIoT(モノのインターネット)社会を背負う物流管理に活用される、低コストの無線タグや電磁波から電力を供給する無線給電システムへの広範な展開が考えられている。
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