ティアフォーが“協力するMLOps”の開発に着手、2024年後半から提供:車載ソフトウェア
ティアフォーは自動運転システム向けのAI開発の規模を拡大する新たな取り組みとして、「Co-MLOpsプロジェクト」を開始した。
ティアフォーは2024年1月10日、自動運転システム向けのAI(人工知能)開発の規模を拡大する新たな取り組みとして、「Co-MLOps(Cooperative Machine Learning Operations)プロジェクト」を開始したと発表した。
Co-MLOpsプラットフォームを導入することで世界中のさまざまな地域で収集されるセンサーデータを共有可能になる。Co-MLOpsプラットフォーム上で提供するMLOps機能やエッジAIのレファレンスモデルを活用することで、各社は独自の自動運転AI開発を強化することができる。
2024年前半には、センサーアーキテクチャの最適化、アノテーション形式の標準化、大規模言語モデル(LLM)を活用したデータ検索とアクティブラーニング基盤の開発を目指す。これらの進展により、より効率的で高精度な自動運転AIの開発につなげる。
また、センサーフュージョン向けに低消費電力で動作するマルチモーダルAIモデルの開発を進めることでさまざまなセンサーから得られるデータを統合し、高度な環境認識能力を備えたエッジAIモデルを実現する。さらに、世界モデルや生成AIによる学習データの生成、ニューラルシミュレーターとの連携などを通じて、現実世界の複雑な状況をシミュレーションしながらAIモデルのトレーニングを強化していく。
2024年後半にはさまざまな新機能を含めCo-MLOpsプラットフォームの運用を本格的に開始する。Co-MLOpsプラットフォームを通じてパートナー企業と協力し、自動運転AIの開発プロセスを改善し、技術の発展につなげたい考えだ。Co-MLOpsプラットフォームの機能開発や仕様策定を進めるパートナー企業は継続的に募集する。
自動運転AIの開発における課題
自動運転AIの開発には大規模なデータセットが不可欠だが、各社は独自にデータを収集しながら類似する技術開発に取り組む傾向があり、データベースの構築や開発プロセスにおいて重複が発生していた。また、リソースが限られる企業では自動運転AIが十分な性能を得るための開発プロセスを運用することが難しいなどの課題もあった。
Co-MLOpsプラットフォームの開発では、各社が収集したデータに対してプライバシーやセキュリティを適切に管理した状態で共有できる仕組みの構築を目指す。また、共有された大規模なデータに対して自動運転AIの開発に必要なMLOps機能が利用できること、共通のMLOps機能により生成されるエッジAIのレファレンスモデルを各社独自の自動運転AI開発に活用できることを実現する。
Co-MLOpsプラットフォームでは、参加企業は技術資産や機能安全、開発プロセス、品質管理で独自の手段を保持することができる。開発成果は、ArmプロセッサをベースにSDV(ソフトウェアデファインドビークル)の標準化を進めるイニシアチブ「SOAFEE(Scalable Open Architecture for Embedded Edge)」のフレームワークや、自動運転ソフトウェアの業界標準を目指す業界団体「The Autoware Foundation」が定義した「Open AD Kit」と統合することができる。これにより、Armの自動車向けプラットフォームを活用しながらSDVの展開に必要なソフトウェア開発が促進されるとしている。
Co-MLOpsプラットフォームの開発にはAWS(Amazon Web Services)のさまざまなサービスを活用する。AWSが提供するストレージやデータベース、コンピューティングなどの基本サービスや、グローバルなインフラがCo-MLOpsプラットフォームの効率的で安定した運用を支えるとしている。将来的には、無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)を介してAIの認識モデルを更新できるようにしていく。
「CES 2024」(米国ラスベガス、2024年1月9〜12日)で、実証実験で得られたエッジAIモデルを展示。実証実験は日本、ドイツ、ポーランド、台湾、トルコ、米国の合計8地域で行った。8地域で収集した映像データを用いてマルチタスク学習を行い、消費電力10W以下で動作するよう最適化されたエッジAIモデルの環境認識性能を評価した。
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