検索
ニュース

自動運転EVによる搬送サービスを月額38万円で開始、ヤマハ発動機とティアフォー無人搬送車

ヤマハ発動機とティアフォーの共同出資会社であるeve autonomyはレベル4の自動運転EVを用いた無人搬送サービス「eve auto」の提供を開始すると発表した。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 ヤマハ発動機とティアフォーの共同出資会社であるeve autonomyは2022年11月30日、工場や倉庫などに向けレベル4の自動運転EV(電気自動車)を用いた無人搬送サービス「eve auto」の提供を同日から開始すると発表した。レベル4自動運転車を用いた屋外自動搬送を商用サービスとして展開するのは国内で初(eve autonomy調べ)だという。

屋外搬送の自動化を「サービス」として提供

 従来、工場や倉庫などで屋外環境での搬送業務は、ほとんどがフォークリフトや台車などを活用して人手で行われてきた。eve autonomyは、これらの自動化を目指し、自動運転技術を使った自動搬送ソリューションを展開するために、ヤマハ発動機とティアフォーによって2020年2月に設立された共同出資会社である。そして、両社の技術を生かして開発されたのが自動搬送サービスのeve autoだ。

 eve autoは、ヤマハ発動機が電動ランドカーをベースに30%小型化した自動運転EVと、ティアフォーが提供する自動運転に関連する商用ソフトウェアプラットフォーム「Pilot.Auto」「Web.Auto」を組み合わせて開発された。

 ヤマハ発動機が開発した車両は、大きさが2275×1105×1885mmで、最大走行速度は時速10kmとなっている。最大牽引(けんいん)重量は1500kg、最大積載重量は300kgで、ランドカーがベースであるため屋外での搬送が行えることが特徴だ。

photo
車両の概要[クリックで拡大] 出所:eve autonomy

 これに、導入支援サービスや運行管理システムなどの運用サポート、定期メンテナンスや地図編集などのアフターサポート、自動運転システム提供者専用保険などの付加サービスをパッケージ化し、月額38万円(税別)のサブスクリプション型サービスとして展開する。工場や倉庫など公道を除く環境で利用できる。2023年度にはパッケージではなく車両だけを販売するプランなども用意する。

photo
eve autonomy 代表取締役 CEOの米光正典氏

 パッケージ化しサブスクリプションサービスとして展開する理由についてeve autonomy 代表取締役 CEOの米光正典氏は「まずは屋外自動搬送についてのハードルを少しでも下げたかった。簡単に使ってもらえる環境を作って広げていくことを考えている」と語っている。

 既に、2020年8月からヤマハ発動機 浜北工場においてレベル4の自動運転による実証を開始。その後、2022年からは社外のパイロットユーザーに対するプレサービスの提供を開始している。現在ではヤマハ発動機の3工場で運用している他、プライムポリマー 姉崎工場、パナソニック 大泉地区コールドチェーン工場、富士電機 鈴鹿工場、日本ロジテム 上尾営業所、ENEOS 根岸製油所など、合計9社で運用しているという。これらの実証により、工場や倉庫のニーズや、そこで生まれた課題の解消などに取り組み、ある程度のめどが立ったために今回本格サービス提供を開始する。

photo
パイロットユーザーの例[クリックで拡大] 出所:eve autonomy

お手軽、パワフル、フレキシブルの3つが特徴

 eve autoの特徴について、米光氏は「『お手軽、パワフル、フレキシブル』の3つだ」と強調する。「お手軽」は導入工事が不要で低コストで迅速にサービスが開始できるということだ。走行経路を一度人手で車両を運転することで、LiDAR(Light Detection and Ranging)などのセンサーを通じて周辺環境の点群データを計測し、それによって地図を作成できる。米光氏は「最短で1週間で導入したケースもある。一般的に考えても1カ月程度で導入決定からサービス開始まで進められる」と述べている。

 「パワフル」は、自動運転EVの走行能力が優れている点を指す。屋内向けのAGV(自動搬送車)では、段差で立ち往生することも多いが、eve autoの車両はもともとゴルフ場などで使用されてきたものをベースとしているため、凹凸のある路面でも走行が可能だ。加えて、ティアフォーの自動運転技術もロバスト性が高いため、トラックやフォークリフトが行き交うような環境や、夜間でも問題なく自動運転走行が行える。

 「フレキシブル」は、走行経路の変更が容易に行える点を示している。Webアプリケーションを通じて、走行経路の変更を現場で自由に行うことが可能だ。「現場に入って実証を進める中で、工場などでは経路変更が意外にニーズとして高いことが分かった。それに対応できるようにしている」(米光氏)。

 eve autoの導入が考えられるターゲット領域は、工場や倉庫で現在フォークリフトを使用しているところだ。米光氏は「費用対効果についてよく聞かれるが、フォークリフトのリース料と、現場作業者の人件費などを合わせて考えると、1台当たり月額38万円というのは見合う価格だと考えてもらえるところも多い。さらに、労働環境や安全面などの価値も生まれる。パイロット導入していただいたプライムポリマー 姉崎工場は累計で1800時間の搬送作業時間を削減できた実証成果も出ている」と語っている。

 eve autoは、まずは日本国内で展開し、4社の代理店などを通じて日本全国で販売していく。「2023年度にまず200台の導入を目指す。その後3年間(2025年度まで)で累計1000台を導入したい」と米光氏は語っている。ヤマハ発動機では既に車両の数百台の量産体制を整えており、国内で実績を積み重ねた上で海外への展開も検討する。ここでもまず、ヤマハ発動機の海外工場で導入し、実証を進める計画だとしている。

≫「無人搬送車」のバックナンバー

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る