ニュース
リチウムイオン電池の新たな電極製造法を開発、CO2の排出量削減に貢献:材料技術
日本ゼオンは、リチウムイオン電池の新しい電極製造方法を開発した。電極の大型乾燥工程が不要で二酸化炭素の排出量を削減する他、正負両極に適用可能で、かつ従来法と同等以上の速度で成形できる。
日本ゼオンは2023年12月5日、リチウムイオン電池の電極製造方法に関して、従来法に代わる新たな技術を開発したと発表した。同技術に関連する材料の商業化の見通しも立っているという。
ドライ成形法は、現在広く用いられているウェット塗工法とは違い、水や有機溶媒を使わずに電極を乾式で成形する。既に一部で実用化されているが、今回の新技術は正極と負極の両方に適用可能で、かつウェット塗工法と同等以上の速度で成形できる。電極の大型乾燥工程が必要なくなり、CO2の排出量や設備投資額を抑えられる。
また、新技術を使って製造される電極は、有機フッ素化合物(PFAS)を含有しない材料で構成されており、今後厳格化の可能性があるPFASの使用制約にも対応する。
電気自動車の普及などにより、リチウムイオン電池市場は拡大し続けており、環境への負荷が少ない、低コストの電池製造技術が求められている。今回開発したドライ成形法には、長年にわたって電極用バインダーの研究開発を続けてきた同社が持つ、電極内の多様な界面を制御する技術が生かされている。
同社は今後も、環境保護関連の規制の高まりを考慮した材料や技術を開発し、エネルギー分野に貢献していくとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 次世代電池開発に役立つCNTシート、リチウム空気電池でもブレークスルー
日本ゼオンは、「nano tech 2023」において、単層カーボンナノチューブを用いて作製したシート材料(CNTシート)の次世代電池開発への適用例を紹介した。 - 合成天然ゴムをバイオマスから作る、細胞設計技術で2020年代前半に実用化
イソプレンを重合して製造するポリイソプレンゴムは、天然ゴムに構造が類似することから合成天然ゴムと呼ばれている。横浜ゴムと理化学研究所、日本ゼオンは、このイソプレンをバイオマス(生物資源)から合成することに成功した。2020年代前半を目標に実用化を目指す。 - カーボンナノチューブ膜の物性予測時間を98.8%短縮、深層学習AIの応用で
NEDOとADMAT、日本ゼオンは、AISTと共同で、AIによって材料の構造画像を生成し、高速・高精度で物性の予測を可能とする技術を開発したと発表した。単純な化学構造を持つ低分子化合物に限定されず、CNT(カーボンナノチューブ)のような複雑な構造を持つ材料でも高精度な物性の予測を実現できる。 - 人工細胞で糖からイソプレンを合成する技術「自然界では不可能な驚異的レベル」
横浜ゴムは、理化学研究所、日本ゼオンとの共同研究により、バイオマス(生物資源)から効率的にイソプレンを生成できる「世界初」(横浜ゴム)の新技術を開発した。 - 医療用ウェアラブル機器向けに、柔軟なCNTシリコーンゴム複合材料を開発
産業技術総合研究所と日本ゼオンは、単層カーボンナノチューブ(CNT)をシリコーンゴムに高分散させることで高導電性を持たせ、柔軟で耐久性に優れたCNTシリコーンゴム複合材料を開発した。 - IBM Watsonを活用した知財情報などの技術動向分析システム稼働開始
AIを使った日本アイ・ビー・エムのテキスト検索、分析プラットフォーム「IBM Watson Discovery」を活用し、日本ゼオンが「技術動向予兆分析システム」の稼働を開始した。