国内製造業のエネルギー転換支援も加速、日本IBMと連携強化したAVEVAの成長戦略:製造マネジメントニュース
AVEVAが国内外でのビジネス戦略に関する説明会を開催。リアルタイムでの産業データ活用を強化するとともに、日本IBMとの連携で水素エネルギーのサプライチェーン/バリューチェーン構築の支援などにも注力する方針だ。
AVEVAは2023年11月15日、国内外でのビジネス戦略に関する説明会を開催した。リアルタイムで産業データを活用するためのソリューションやプラットフォームを強化するとともに、日本IBMとの連携などを基に水素エネルギーのサプライチェーン/バリューチェーン構築の支援などにも力を入れていくとした。
2024年以降の成長に向けた3つの戦略軸
AVEVAは製造業など幅広い業種を対象に、データ活用のためのプラットフォームやアプリケーション、可視化ツールを提供する企業だ。現在は世界で約6000人以上の従業員が在籍する。2017年にシュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)の傘下に入り、2018年には同社のソフトウェア事業と合併、2021年にはプラント向けの時系列データ管理ソフトウェア「PI System」を展開するOSIsoftと統合している。2023年にはシュナイダーエレクトリックの100%子会社になった。
AVEVAと同名の日本法人でヴァイスプレジデント 日本統括を務める小暮正樹氏は、2022〜2023年にかけての同社事業を振り返り、「シュナイダーエレクトリックとOSIsoftとの統合によって、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に対して、PI Systemにアセット管理やプロセスシミュレーションなどを組み合わせてフルポートフォリオマネジメントで貢献する機会が増えた。1つのプラットフォーム上でソリューションを提供できるようになり、フルポートフォリオのビジネスが加速している」と語った。特に、化学や電力業界からはPI Systemを活用した予知保全に関するデータ活用の相談も多くなっているという。サブスクリプション形式のサービス利用が増加し、クラウドソリューションの引き合いも増えるといった変化もあったようだ。
2024年以降の取り組みについては「ナンバーワンのインダストリアルソフトウェアカンパニーになる」(小暮氏)ことを目標に、3つの軸に沿って戦略を展開するとした。
1つ目は提供可能なソリューションの種類と機能の拡充だ。統合エンジニアリング設計ソリューション「AVEVA Unified Engineering」や、オペレーションデータのリアルタイム活用を促進する「AVEVA PI Data Infrastructure」、データ共有のための「AVEVA Data Hub」などを活用してデータを連携させることで、産業分野でのAI(人工知能)活用促進も狙う。新人メンテナンス担当者向けの作業支援システムのような形で、すでにAI活用の具体的な取り組みは進んでいるという。
2つ目が顧客事例の積極的な公開だ。直近では2023年11月15日に、三菱ケミカルがAVEVAの産業データの連携基盤「AVEVA Asset Information Management(AIM)」を導入したことを発表した。リアルタイムのデータに基づき、プラントのオペレーションを判断するために採用したとしている。
3つ目がパートナーシップの拡大だ。AVEVAは2023年11月15日、国内製造業の脱炭素加速を目的として日本IBMとの提携強化を発表した。日本IBMの東京本社(東京都中央区)にある「IBM Innovation Studio」内に、設備資産情報管理ソリューション「AVEVA Asset Information Management」やオペレーションデータのリアルタイム管理ソリューション「AVEVA Unified Operations Center」「AVEVA PI System」などに、設備保全管理ソリューション「IBM Maximo Application Suite」を組み合わせたシステム環境を展示しているという。
小暮氏は「2024年からは化学産業に加えて再生可能エネルギーなどのエネルギー産業、送配電に関わる企業、食品飲料業界などに対して積極的にビジネスを展開していきたい」と展望を語る。特に再生可能エネルギーについては水素エネルギーに関連したプロジェクトの相談が増加しているようだ。日本IBMの展示を通じて、脱炭素に向けたパートナー企業の巻き込みを促進する狙いがある。
シュナイダーエレクトリックを経て2023年3月にAVEVA CEOに就任したキャスパー・ヘルツベルク氏は、DXに失敗する企業が多い中で成功する企業も存在することに触れて、「個々人が何十年にもわたり蓄積してきたIT/OTやプロセス技術などに関する深い知見やスキルをつなぎ合わせ、それらのエコシステム同士をどのように連携するかが成功の鍵になる」と指摘した。
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