ガラスでLiDARの検知距離をもう一伸び、AGCがBピラー組み込み品でデモ:ジャパンモビリティショー2023
AGCは、「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー、旧東京モーターショー)」において、ADASや自動運転システムなどで採用拡大が見込まれるLiDAR向けのガラス部材を披露した。
AGCは、「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー、旧東京モーターショー)」(プレスデー:2023年10月25日〜26日、一般公開日:10月28日〜11月5日、東京ビッグサイト)において、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転システムなどで採用拡大が見込まれるLiDAR向けのガラス部材を披露した。
赤外線レーザーを用いて周囲の歩行者や車両などを検知できるLiDARは、2024年以降の自動車への本格的な搭載に向けて開発が加速している。この赤外線レーザーを減衰させることなく照射するとともに、対象物からの反射光を的確に捉えて測定できることがLiDARの性能を左右する。「これまでのLiDARでは樹脂部材を使う場合もあった。当社のガラス部材に置き換えることで、例えば200mの検知距離を210m、220mに伸ばすことができる。そして、この一伸びがADASや自動運転システムの差異化に大きく効いてくる」(AGCの説明員)。
AGCが展示したLiDAR関連製品としては、ノイズとなる波長をカットする干渉フィルター、赤外線レーザーの発信と受信の両方に用いる非球面レンズ、高出力の赤外線を発するLEDやLD向けのガラスセラミックス基板、光の回折/屈折を利用して任意のパターンで赤外線を照射するDOE(回折光学素子)/ガラス拡散板、LiDARの内部構造を保護する赤外線透過カバーガラスなどがある。
また、同社のガラス部材を用いたLiDARのモックアップやデモシステムも披露した。例えば、車両の前方や後方の検知に用いる屋根部搭載のLiDARは、樹脂筐体と一体成形が可能な合わせガラスを用いている。デモンストレーションでは、車両側面方向の検知に用いられるBピラーに組み込むLiDARによって展示ブース近くの来場者を検知してみせた。
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