フォトニック結晶レーザーでLiDARを3分の1に小型化、京大と北陽電機が開発:Society 5.0科学博
京都大学工学研究科 教授の野田進氏らの研究グループと北陽電機は、「Society 5.0科学博」において、共同開発したクラス最少のLiDARを披露した。フォトニック結晶レーザーの搭載でビーム整形のためのレンズが不要になるため、大幅な小型化を実現しており、AGV(自動搬送機)や農業機械、自動運転車など向けに事業化を進めたい考えだ。
京都大学工学研究科 教授の野田進氏らの研究グループと北陽電機は、最先端科学技術の展示会「Society 5.0科学博」(2021年7月15〜28日、東京スカイツリータウン)において、共同開発したクラス最少のLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)を披露した。フォトニック結晶レーザーの搭載でビーム整形のためのレンズが不要になるため、大幅な小型化を実現しており、AGV(自動搬送機)や農業機械、自動運転車など向けに事業化を進めたい考えだ。
現行のLiDARの半導体レーザーは、光出力増大のため面積を拡大したブロードエリアタイプが用いられている。このブロードエリア半導体レーザーは、ビーム品質が悪く広がりが大きいため低輝度であるため、ビーム整形のための複雑な外部レンズ系や、それらレンズ系の精密な調整が必要になる。一方、フォトニック結晶レーザーは、高いビーム品質により、光出力を増大させた場合でもレンズ系を使わずに狭い拡がり角を持つ高輝度ビーム出射が可能である。
ブロードエリア半導体レーザーとフォトニック結晶レーザーの違いを示すデモ。写真右側にあるディスプレイを見ると、ブロードエリア半導体レーザーは光が縦方向に広がっているが、フォトニック結晶レーザーは1点に収束していることが分かる(クリックで拡大)
野田氏らの研究グループは2020年6月、このフォトニック結晶レーザーを用いたLiDARを開発したことを発表。このときは、フォトニック結晶レーザーの高いビーム品質を生かしてシステムや調整の簡略化、分解能の向上が従来のLiDARとの違いになっており、LiDARのサイズは同じだった。今回の展示で披露したLiDARでは、高い分解能は維持したまま、フォトニック結晶レーザーのレンズフリー特性を生かして光源部と受光部を一体化することにより、従来のLiDARと比べて高さで40%減、体積で3分の1という小型化を実現している。「倉庫などでかご車を運ぶ低床型AGVのセンサーに最適な小型化を実現できているのではないか」(展示の説明員)。
なお、これらフォトニック結晶レーザー関連の研究は、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「光・量子を活用したSociety 5.0実現化技術」などの下で進められており、2022年度のプロジェクト終了を見据えながら、実用化に向けた取り組みを加速させたい考えだ。
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