難燃性の再生プラはコスト抑制にも貢献、シャープが独自技術でアップサイクル:材料技術
シャープは「CEATEC 2023」で、同社独自の技術で実現した、廃棄プラスチックに難燃性を付与してアップサイクルを行った取り組みを展示した。
シャープは「CEATEC 2023」(2023年10月17〜20日、幕張メッセ)のアドバンスドテクノロジーエリアで、環境に配慮した商品開発、製造に関する展示を行った。その中で同社独自の技術で実現した、廃棄プラスチックに難燃性を付与してアップサイクルする取り組みを紹介する。
熱源近くにある部品として使用可能
シャープは以前から廃棄された同社製品から回収したプラスチックの水平リサイクルに取り組んできた。回収したプラスチックに、同社独自のレシピで調合した添加剤を付与することで、バージン素材と同程度の強度や耐久性を持つ再生プラスチックが生産できる。廃棄された製品によって使用している樹脂の種類は異なるため、添加剤はそれぞれの素材に合わせたさまざまな調合パターンを用意している。
これにより、自社製品由来の廃棄プラスチックから合計で5回程度の水平リサイクルを可能にしている。実際に、シャープの担当者によると、「2001年に当社が発売した洗濯機を例にとると、同モデルから回収した廃棄素材を新品の洗濯機に活用するサイクルが4回程度繰り返されているケースもある」という。なお、「5回」という数字は必ずしもリサイクルの上限回数を意味するわけではない。
今回新しく展示したのは、難燃剤を添加剤のレシピに加えることで、熱の影響を受けにくくしてアップサイクルした再生プラスチックだ。難燃剤の追加による衝撃強度の低下を防ぐなど、添加剤の調合バランスを工夫することで実現した。
アップサイクルした再生プラスチックを使うことで、掃除機や炊飯器などのモーターや基板といった熱源を持つ機器で、これまで金属を用いてきた部品が代替できる可能性がある。ヒーターに隣接するため、一般的には金属性の部品などを使用している箇所だが、「当社ではリサイクル材100%で構成されたパーツを採用できるようになった」(シャープ担当者)という。
展示会場では、セラミックファンヒーター内部にある空気制御部分に使用したサンプル品を展示していた。具体的な計画があるわけではないが、シャープのスマートフォン「AQUOS」シリーズなどで採用する可能性もあり得るようだ。金属部品を代替することで、機器全体の軽量化も狙える。
また、アップサイクルした再生プラスチックは、「バージン素材(ここでは難燃性を持つプラスチック素材)を使用する場合と比べて、コストメリットが期待できる」(シャープ担当者)という。難燃性を持つプラスチックは汎用プラスチックと比べると量産規模は小さく、価格は高価なものになりがちだ。このため、「汎用プラスチックをアップサイクルして難燃性を付与する方が、コストを抑えやすい」(同担当者)とする。
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