アップサイクルのプラットフォームが始動、間伐材と廃棄された紙容器をTシャツに:リサイクルニュース
日清紡グループのニッシントーア・岩尾、ネスレ日本、凸版印刷などは、国内で廃棄される資源や食品残渣のリサイクル率向上を推進する企業連携のプラットフォームとして「一般社団法人アップサイクル」を設立した。
日清紡グループのニッシントーア・岩尾、ネスレ日本、凸版印刷をはじめとする14の企業/団体が参画する一般社団法人のアップサイクルは2023年3月2日、東京都内で会見を開き、設立の経緯や第1弾プロジェクトとして展開している「TSUMUGI(ツムギ)」について紹介した。
アップサイクルは、国内で廃棄される資源や食品残渣のリサイクル率向上を推進する企業連携のプラットフォームとして同年2月7日に設立された。
アップサイクルの参画企業/団体、ニッシントーア・岩尾、ネスレ日本、凸版印刷、シーエヌシー、日本ロレアル、メットライフ生命保険、神戸市役所、SHAREWOODS.、艶金、ZERO、インクルーシヴ・ジャパン、人車折神社、備後撚糸、加賀友禅 毎田染画工芸[クリックで拡大] 出所:アップサイクル
コーヒー豆の残渣は染料に再活用
アップサイクル 代表理事の森原洋氏は「近年、国内では持続可能な社会づくりについての関心が高まっているが、一部の資源が再利用されずに廃棄されているだけでなく、資源として回収および活用する方法が十分に整備されていないなど課題は多い」と指摘する。
「さまざまな企業と団体がリサイクルされていない資源を有効活用するためのプラットフォームとして設立されたのがアップサイクルだ。アップサイクルでは、循環型社会づくりのハブとなり、参画企業/団体が持つ優れた技術を用いて、資源の再活用を後押しする」(森氏)
第1弾プロジェクトのTSUMUGIでは、ネスレ日本の工場で製品の製造時に規格外として廃棄される紙製のパッケージと六甲山の間伐で生じるスギやヒノキを素材に紙糸を作る。紙糸の生産手順は、まずネスレ日本や神戸市役所の協力を受け、廃棄される紙パッケージと六甲山の間伐材を回収し、再生紙パルプを作る。
次に、再生紙パルプとバージン紙パルプを混合し加工して再生紙とした後、再生紙をスリットして細くする。その後、備後撚糸が保有する撚糸技術(糸をより合わせ1本の糸にする技術)により、細くした再生紙とコットンを組み合わせ紙糸を作る。
この紙糸を用いて製造したTシャツは、ネスレ日本が東京都渋谷区で運営する「ネスカフェ 原宿店」のユニフォームや吉本興業がプロデュースしているBS吉本の番組「サステナの虎」で開発された「サステナの虎Tシャツ」の素材に使われている。
いずれのTシャツも、シーエヌシーにより回収されたコーヒー豆の残渣を用いた染料で艶金が着色している。サステナの虎Tシャツは、吉本興業に所属するお笑いコンビの「ロングコートダディ」がデザインを担当し、よしもとセールスプロモーションの通販サイト「チーキーズストア」で2022年10月6日から販売されている。
今後は、参画企業/団体が廃棄している紙製パッケージ廃棄物や流通店舗で回収した牛乳パックなども紙化する他、アパレルメーカーとコラボレーションして紙糸を活用した衣料の開発にも踏み切るという。
「紙糸」の開発経緯
アップサイクル 事務局長の瀧井和篤氏は、「国内には、ごみ処理用の焼却施設が1056棟あり、日本で発生するごみの総処理量の80%以上が焼却処理されている。また、家庭で廃棄される紙製の容器包装は年間73.8万トンに達し、容器包装リサイクル法に基づき回収されているが、リサイクル商品に使用されているのは約2万トンで、そのリサイクル率は約2.7%となっている。さらに、山林の保全や防災、道路整備で発生する間伐材の一部は、大きさや形状から活用が難しいものがあり放置されている」と説明した。
続けて、「こうした現状を『もったいない』と考え、廃棄される紙資源や間伐材をアップサイクルするプロジェクトとしてTSUMUGIを始動した。紙糸は、柔らかく、優しい手触りだ。紙糸によって作られた衣服は、湿性や軽量性に優れ、しっかりとした縫製で長く着られる」と補足した。
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