コニカミノルタが描く勝ち筋、モノづくりの要所を押さえて得られる価値とは(前編):製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
コニカミノルタはインダストリー事業の戦略について発表。豊富な顧客接点とキーコンポーネントを持つ強みを生かし、個々の事業の強みとともに、これらを複合的に提案することで、同事業の成長につなげる。
顧客のエンジニアリングチェーンに深く入り込む
また、インダストリー事業内での情報の社内活用などの動きが成果に結びついているのが、ディスプレイ関連事業である。コニカミノルタのディスプレイ関連事業は、ディスプレイパネルメーカーやテレビなどディスプレイを使う完成品メーカーなどを対象顧客とした光源色計測装置、装置メーカーを対象顧客としたインクジェットヘッド、偏光板メーカーを対象顧客とした機能性フィルムなどを展開している。
ただ、ディスプレイを製造するために、これらの対象顧客たちはそれぞれが連携をしながらモノづくりを進めている。例えば、完成品メーカーやその生産委託を受けるEMS企業は製品仕様としての品質を定めるために、設計段階で光源色計測装置による計測を義務付けると、それは、ディスプレイパネルメーカーの設計開発や設備投資にも影響する。
またインクジェットヘッドは、ディスプレイパネルのカラーフィルターやLCDなどへのパターン形成で使用されるが、ディスプレイパネルメーカーの設備投資になるので、その情報は光源色計測装置の導入などにも生かせる。さらに、インクジェットヘッドや光源色計測装置に関連してディスプレイパネルメーカーの設計開発部門の情報交換が進めば、機能性フィルムの開発などにも生かすことができる。このようにモノづくりのキーコンポーネントを抱えていることで、ディスプレイ産業全体が抱える課題の把握や変化の情報などを把握できるようになり、これらにいち早く対応することで顧客課題の解決につなげられるというわけだ。
コニカミノルタ 執行役員 機能材料事業部長の大久保賢一氏は「顧客のエンジニアリングチェーンに深く入り込み、(機密情報保持は守った上で)それぞれの情報を有効活用することで、共創を起点としてワンショットでない持続的なビジネスモデルを構築することができている。また、それぞれの売り上げが計上できるタイミングもずれるため、変化の激しいディスプレイ産業において業績の安定化ができる点も利点だ」と述べている。
ジャンルトップ製品をさらに強化
中長期では、これらの顧客接点を生かしつつ、ジャンルトップ製品として光源色計測装置、インクジェットヘッド、機能性フィルムを引き続き強化していく。光源色計測装置では、デバイスのOLED化への波を捉え導入を広げていく方針。既に黒の表現に優れるOLED向けに低輝度に対応した測定装置は開発済みで、顧客との関係性からより正確なニーズを把握して製品化につなげていく。また、新たにAR(拡張現実)/VR(仮想現実)向けのディスプレイ用計測装置の開発なども進める。
インクジェットヘッドは、パターン描画と薄膜形成の強化を進める。高解像度化に対応するため、小液滴のヘッド開発を行う。また、特殊インクへ対応したヘッド開発なども進める。機能性フィルムでは、ディスプレイ向け偏光板用フィルムの市場成長率は鈍化しているものの、幅2.3m以上の大型サイズでの需要は引き続き伸びることから、この領域の強化を進めていく計画だ。
機能性フィルムでは、幅広の大型サイズのフィルムを効率よく生産できるように生産体制も強化した。従来は兵庫県神戸地域での一貫生産となっていたが、溶液製膜工程と延伸工程を分離。神戸地域では溶液製膜のみに特化し、さまざまな材料を使用した製膜に特化することで、生産性を高める。一方で、顧客に応じたカスタマイズが必要な延伸工程は、山梨県甲府に新ラインを2つ設立して、集中的な生産を行う。これにより、効率性とカスタマイズ性の両立に成功した。
これらの生産工程では、より効率的で安全安心な製造現場を実現するために製造DX(デジタルトランスフォーメーション)も推進。製造工程のさまざまな箇所にセンサーやカメラを設置し、製品の品質確保や異常時の原因把握などに活用する。さらに、バイタルセンサーなども組み合わせ、従業員の安全確保などにも使用している。また、収集したデータはネットワークで収集し、中央管理室で見える化を進めている他、AI(人工知能)やPI(プロセスインフォマティクス)などを活用し、条件変化時の調整などに活用しているという。
大久保氏は「個々の強みを磨いていく他、ディスプレイメーカーや関連企業との結び付きを生かし製造プロセス革新や次世代材料開発への入り込みを目指していく」と今後について語っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- モノづくりのインクジェット化で工程改革、コニカミノルタが進める工業用途の拡大
コニカミノルタは各事業の最新の取り組みを紹介する「Konica Minolta Day」を東京都内およびオンラインで開催した。本稿では、IJコンポーネント事業に関して取り上げる。 - 関西の画像IoT開発拠点から生まれる新技術、らしからぬ事業創出も続々
コニカミノルタは画像IoT(モノのインターネット)基盤「FORXAI」の研究開発拠点「Innovation Garden OSAKA Center」(大阪府高槻市)を報道陣に公開し、FORXAIを活用した多数のソリューションを紹介した。 - コニカミノルタが堺事業所で進める多品種少量生産、人への依存なくす効率化を推進
コニカミノルタ大阪府の堺事業所を報道陣に公開し、堺事業所で進める多品種少量生産への取り組みや、堺事業所が中心となっているインダストリー事業の一角センシング事業などについて説明した。 - 着々と開発進むコニカミノルタの画像IoT技術、検査や搬送など生産現場への応用も
コニカミノルタがNVIDIA主催のオンラインイベント「NVIDIA AI DAYS 2022」(2022年6月23〜24日)の初日に行われた「EDGE DAY」で講演し、技術開発を進めている「FORXAI」の活用事例などを紹介した。 - 10年で10事業から撤退、イノベーションに活路を見いだすコニカミノルタの挑戦
日系製造業は事業環境の変化に悩まされ続けている。その中で新たなビジネスの芽を生み出し続けることは非常に重要な課題である。「10年で10事業から撤退した」というコニカミノルタでは、ロジックでイノベーションを生み出すため、組織的な取り組みに力を注ぐ。 - きっかけは朝のニュース、コロナ禍が結んだコニカミノルタとタムラテコの協業
コロナ禍は多くの企業に苦しみをもたらしているが、厳しい環境だからこその新たな出会いにつながったケースもある。コロナ禍をきっかけに包括的協業に進んだコニカミノルタとタムラテコの経緯と今後の取り組みについて話を聞いた。