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図研が電子回路設計CADでAI自動配置配線を実現、設計時間を半減する効果も組み込み開発ニュース

図研は、電子回路設計用CADツール「CR-8000 Design Force」のオプションソフトウェア製品として、AIによって自動で配置配線が行える「Autonomous Intelligent Place and Route(AIPR)」を市場投入すると発表した。

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 図研は2023年9月19日、電子回路設計用CADツール「CR-8000 Design Force」のオプションソフトウェア製品として、AI(人工知能)によって自動で配置配線が行える「Autonomous Intelligent Place and Route(AIPR)」を市場投入すると発表した。AIPRを用いることで、これまで配置配線にかかっていた設計時間を半減することも可能だという。CR-8000 Design Forceの最新バージョンとなる「CR-8000 Design Force 2024」から利用可能で、2024年3月末をめどにリリースする計画である。

図研のAI自動配置配線プラットフォーム「Autonomous Intelligent Place and Route(AIPR)」と3つのBrain機能の概要
図研のAI自動配置配線プラットフォーム「Autonomous Intelligent Place and Route(AIPR)」と3つのBrain機能の概要[クリックで拡大] 出所:図研

 AIPRは、図研の英国と日本の技術部門が共同開発したAIエンジンをCR-8000 Design Forceに組み込み、CADツール上の配置配線コマンドと直接連携させることで高速動作を実現している。機械設計用の3D CADツールでは既にAI活用機能が利用され始めているが、「電子回路設計用CADツールでは業界初になるだろう」(図研)という。

 製品構成としては、まずAIPRが自動配置配線のプラットフォームとなる。AIPRは、差動配線などを避けるトランキングや、自動等長を図るレングセン、マウス軌跡に沿って配線する半自動バス配線といった対話型の自動配線/自動配置の機能を有しており単体でも利用可能だ。AIを活用した自動配置配線は、プラットフォームであるAIPRに、AIモデルの学習を行った特徴DB(データベース)が異なる「Brain機能」を組み込むことで行えるようになる。

 2024年3月末のリリース時点で利用可能なBrain機能が「Basic Brain」である。Basic Brainは、図研による学習済み特徴DBを利用したAI自動配置配線機能で、これまで蓄積してきた図研の回路基板設計のナレッジと新しく開発したAIエンジンを組み合わせることで、従来とは一線を画した自動配置配線を行える。

 従来の自動配置配線は、配線長を短くビアを少なくといった人手に近い配置配線を行おうとすると自動化のレベルが低下が低下してしまうが、より自動化を進めると人手に近い配置配線にならないというトレードオフが存在したが、AI自動配置配線機能はその限界を超えて、人手に近い配置配線を高い自動化レベルで行える。

 また、類似ピンパターンの探索によって自動配線を行う模倣配線や、バス配線時の終端ピンへの引き込みパターンをAIの解析によって複数生成する終端配線候補生成などの機能も備えている。

 このBasic Brainを標準的なAIエンジンとして、ユーザーの設計資産や新たな設計データを学習させた特徴DBを活用したAI自動配置配線を行えるようになるのが「Dynamic Brain」である。AIにユーザーの設計資産や新たな設計データを設計対象物のアプリケーション分野などの特徴別に学習させることで、対象分野別に設計者のナレッジや嗜好をくみ取った設計を実行できる。これによって、設計者の経験やスキルに依存しない高品質な基板設計を実現できる。

 そして、ユーザーのさまざまな設計データに基づく特徴DBを取り入れたDynamic Brainを基に、AIが対象分野別の複数の特徴DBを戦略的かつ自律的に選択して配置配線設計を繰り返し、設計を最適化する自律的なAI自動配置配線機能が「Autonomous Brain」である。Dynamic Brainの学習データを活用することで、AIが設計者の思考に近い自動配置配線を実行でき、人手の設計に限りなく近い基板の自動設計が可能になるという。

 なお、Dynamic BrainとAutonomous Brainは2024年度以降にリリースを想定している。また、Basic BrainにはAIPRが、Dynamic BrainにはAIPRとBasic Brainが、Autonomous BrainにはAIPRとBasic BrainとDynamic Brainが必要になる仕様となっている。

 一般的なAIPRの運用としては、ユーザーのオンプレミス環境内のWindows Server上に構築し、設計者がCR-8000 Design Forceを利用しているクライアント端末と連携する方式になる。AIPRはサーバで運用されるが、ライセンス管理についてはCR-8000 Design Forceと同様にユーザーごとにカウントすることになる。

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