日立の“Astemo”じゃないEV関連ソリューション、出力500kWの超急速充電器も:電動化(2/2 ページ)
日立製作所は、プライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2023 JAPAN」において充電インフラなどのEV関連ソリューションを展示した。
「Hybrid-PCS」は停電時にビルの水道ポンプも動かせる?
大容量マルチポートEVチャージャと隣合う形で展示されていたのが、日立ビルシステムの「V2Xシステム対応Hybrid-PCS」である。
展示では、2023年1月に日産自動車と共同で発表した、EVからの給電で停電時のエレベーター利用を可能にするための取り組みをイメージする形で、軽EVである「サクラ」とV2Xシステム対応Hybrid-PCSを接続している。
日産自動車との実証実験は、サクラからの電力を用いて停電時にエレベーターを低速で動かすという内容だった。公称では約10時間の運転が可能としているが「実証実験では14〜15時間まで運転することができた」(日立ビルシステムの説明員)という。
実証実験の成果を受けてV2Xシステム対応Hybrid-PCSは2023年7月に発売しているが、停電時におけるエレベーター以外のビルシステムの運転にも対応すべく、まずはビル内の上下水道の制御に用いられているポンプを対象とした実証実験を始めている。2023年度内には実証実験を完了してから、事業化を検討する方針である。
日立ハイテクが目指す商用EVのリチウムイオン電池ライフサイクル管理
日立ハイテクは、商用EVのリチウムイオン電池ライフサイクルマネジメントソリューションに関する提案を行った。
日本国内ではEVの普及が進んでいないが、特に商用車はEV化で遅れている状況にある。その理由の一つに、商用EVの車両価格の40%に達するリチウムイオン電池についてリユースやリサイクルのプロセスが未確立なことが挙げられる。
さまざまな分析機器や測定ソリューションを手掛ける日立ハイテクは「見る」「測る」「分析する」をコア技術としており、商用EVのリチウムイオン電池のリユース/リサイクルに関わるさまざまなプロセスへの提案を強化していく方針である。
ソリューションの一つになるのが、商用EVのテレマティクスシステム経由で取得したBMS(バッテリーマネジメントシステム)データを基に、物理モデルと時系列データ処理を組み合わせて、劣化状況を含めた現在のリチウムイオン電池の状態を示すSOH(State of Health)を高精度に推定する電池劣化診断である。
電池劣化診断については、既に中国の商用EVレンタル企業と共同でPoC(概念実証)、PoV(価値実証)を進めている。今後も、EVの普及が急速に進む中国や欧州など海外で先行して事業を展開していく方針である。
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