リチウムイオン電池の正極材製造とリサイクル、産学でCO2排出量とコストを半減:電気自動車
東京大学生産技術研究所とプライムプラネットエナジー&ソリューションズ、パナソニック、豊田通商は2022年1月26日、リチウムイオン電池の材料製造プロセスやリサイクルに関する共同研究を開始すると発表した。共同研究の成果は、2025年以降にEV(電気自動車)が増えていくのに間に合わせる形で実用化したい考えだ。
東京大学生産技術研究所とプライムプラネットエナジー&ソリューションズ、パナソニック、豊田通商は2022年1月26日、リチウムイオン電池の材料製造プロセスやリサイクルに関する共同研究を開始すると発表した。共同研究の成果は、2025年以降にEV(電気自動車)が増えていくのに間に合わせる形で実用化したい考えだ。
ニッケルやリチウム、コバルトの金属資源開発、精錬工程から電池材料の開発製造に至るまで一気通貫で既存のプロセスを見直し、より電池用途に特化した最適なプロセスを新たに構築する。CO2排出量低減や、生産コスト低減、材料生成のリードタイム短縮など課題解決を目指す。共同研究では要素技術の開発にとどまらず、開発成果を商業活用する方策も検討していく。
また、電池製造時の廃材や使用後の電池から効率的かつ無駄なくリサイクルするための技術開発を推進する。電池メーカー、リサイクルのための回収や処理を担う商社、総合的なレアメタル精錬技術を保有する大学の4者の知見を融合し、最適なプロセスを新たに構築。リサイクルの過程で発生するCO2排出量やリサイクルコストの大幅低減を目標とする。正極材を焼成する際に水素エネルギーを使用するなどのCO2排出削減策も検討する。
電動車の市場規模は2030年に2020年比5倍に拡大し、使用する電池の量は数十倍の規模に拡大すると見込む。その中で、電動車のコストの多くを占める電池のコスト競争力の強化や、製造からリサイクルまでのCO2排出量削減が一層求められている。
車載用バッテリーの原価や製造時のCO2排出の大きな割合を占めるのが資源であり、電池メーカーだけでなくサプライチェーン全体で取り組む必要がある。
2030年までに電池産業全体でCO2排出80%削減
今回発表した共同研究では、資源から材料を製造するまでのプロセスと、リユース後のリサイクルでのプロセスの改善に焦点を当てる。
現状の材料製造までの工程は電池用に最適化されていない部分もあり、工程が多くリードタイムが長い。CO2排出量も多い。採掘された鉱石から中間体を製造し、正極材とするまでのプロセス向けに新技術を開発するとともに、工程を電池用に最適化し、コストやリードタイム、CO2排出量を半減させる。新技術で中間体や正極材を製造する上では、電池として求められる仕様の最適化も重要になる。
リサイクルでは、前処理、後処理、前駆体製造、正極活物質の製造の全ての段階でCO2が発生し、工程数も多い。共同研究では、工程を短縮し、使用するエネルギーを減らしながらCO2排出量を半減する技術開発に取り組む。リチウムのリサイクルについては、新規に採掘された資源と比べて安価でCO2排出量が少なくなるかが課題となる。
電池産業全体で2030年までにCO2排出量を現状から80%削減することを目指す。共同研究により、正極材の製造でのCO2排出量を半減するとともに、その他部材や電池製造でのCO2排出量を電池メーカーや素材メーカーなど各社が実質ゼロとすることで実現する。
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