QST基板からGaN機能層を剥離し、異種材料基板に接合する技術を開発:材料技術
OKIは、信越化学工業が独自に改良したQST基板から、CFB技術を使ってGaN機能層のみを剥離し、異種材料基板に接合する技術を発表した。これによって縦型GaNパワーデバイスの普及に必要な課題を克服できる。
OKIは2023年9月5日、同社のCFB(クリスタル/フィルム/ボンディング)技術を用いて、信越化学工業が独自に改良したQST基板からGaN(窒化ガリウム)機能層のみを剥離し、異種材料基板に接合する技術を発表した。QST基板は、米国カリフォルニア州のQromisが開発したGaN成長専用の複合材料基板で、2019年に信越化学がライセンスを取得している。
「ウエハー大口径化」と「縦型導電の達成」の課題を解決
縦型GaNパワーデバイスは、次世代デバイスとして注目されるGaNデバイスの1つだ。電気自動車の航続距離を延長したり、充電時間を短縮したりと基本的な性能アップが期待できることから、今後大幅な需要拡大が見込まれる。一方、その本格的な普及には、生産性向上のための「ウエハー大口径化」と、大電流制御を可能とする「縦型導電の達成」という2つの課題がある。
信越化学工業のQST基板は、GaNと熱膨張係数が同レベルのため、反りやクラックを抑える特性を持つ。これにより、8インチ以上のウエハーでも、高耐圧な厚膜GaNの結晶成長ができるため、大口径化が可能になる。
また、OKIのCFB技術は、同QST基板からデバイスの高い特性を保持したままでGaN機能層のみを剥離できる。加えて、GaN結晶成長に必要な絶縁性バッファー層を取り除き、オーミックコンタクトが可能な金属電極を介して多様な基板に接合できるため、高い放熱性を持つ導電性基板と接合すれば、優れた放熱性と縦型導電の双方が可能になる。
2つの課題を克服する両社の技術により、縦型GaNパワーデバイスの実装化に向けて大きく前進することになる。信越化学工業はQST基板もしくはエピタキシャル基板を供給し、OKIはパートナーとの協働やライセンスを通じてCFB技術を提供することで、縦型GaNパワーデバイスの実装化を進めていく。
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