国内化学産業の“川上”のGHG排出量は2030年度に5969万tと予測:脱炭素
矢野経済研究所は、化学産業のカーボンニュートラルに向けた動向調査の結果を発表した。2030年度の温室効果ガスの排出量は5969万tと予測され、2025年度の予測と比較して2052万tの減少が見込まれる。
矢野経済研究所は2023年8月29日、石油精製会社、石油化学メーカー、総合化学メーカーなどの化学産業のカーボンニュートラルに向けた動向調査の結果を発表した。
サプライチェーンの川上に位置する化学産業は、鉄鋼に次いでCO2を多く排出する。中でも、化学製品の原料となるプラスチック、合成ゴム、繊維などの基礎化学品を製造する企業は、同産業の川上に位置する。
これらの企業では2030年に向けて、自社排出にあたるScope1や、電気などの使用に伴う間接排出のScope2で、CO2排出量の削減率などを中間目標として設定した。ナフサ分解炉や自家石炭火力発電設備を対象とし、燃料転換や設備のエネルギー高効率化などに取り組んでいる。
サプライチェーン全体の排出削減にあたるScope3については、技術の研究開発が進められている。具体的には、ケミカルリサイクルやCCU(二酸化炭素回収、有効利用)、CCS(二酸化炭素回収、貯留)、ナフサからバイオナフサの調達、切り替えを検討する動きが見られる。しかし、それらは実装に至っていないケースが多く、現状では各企業が対応できる範囲でScope1、2のCO2排出量を削減している。
2025年度以降は、低炭素燃料の混焼率増加や脱炭素燃料の導入、CO2を回収して有効利用するCCUS(二酸化炭素回収、有効利用、貯留)技術の実装化、2030年度に直接または間接的に排出する温室効果ガス(GHG)はCO2換算で5969万トン(t)になると予測。2025年度の予測と比較して、2052万t減となる見込みだ。
今後は、廃プラスチックや廃棄物などを化学的に処理して原料に戻すケミカルリサイクルの推進がカギになるとしている。
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