EVの“本格的な普及”は2025年か、それとも2035年か:電動化
矢野経済研究所は2022年8月17日、脱炭素が自動車産業に与える影響に関する調査結果を発表した。新車販売に占める電気自動車(EV)の比率は2030年に最大で24.7%に上昇すると見込む。
矢野経済研究所は2022年8月17日、脱炭素が自動車産業に与える影響に関する調査結果を発表した。新車販売に占める電気自動車(EV)の比率は2030年に最大で24.7%に上昇すると見込む。
2021年のグローバルでの新車販売は7680万台で、このうちEVは前年比2.3倍の465万台でシェアは6.1%だった。半導体不足などの影響で新車販売全体が低迷する中でEVの台数増加が目立った。
EVの本格的な普及期に突入するのは早ければ2025年、普及が滞る場合で2035年と矢野経済研究所は予測する。矢野経済研究所では、本格的な普及期について新車販売に占めるEVの比率が16%を超えることを目安とした。これはマーケティング理論の「イノベーター理論」に基づいている。
同理論では、新たな商品やサービスが普及する過程で初期段階と普及期段階の間に大きな溝(キャズム)があると定義している。導入の最初期に採用するユーザー(イノベーター)が市場に占める割合が2.5%、それに続いて購入する層(アーリーアダプター)の比率が13.5%とされている。その後「アーリーマジョリティー」「レイトマジョリティー」という多数派の購入へと進む。
2025年に普及期に入るのは、世界各国が予定しているEVの導入目標が順守された場合であるという。2035年という見立ては、EVが小型車や高級車に限られて量販セグメントに適合せず、資源価格高騰によって電池価格が下げ止まり、再生可能エネルギーの導入停滞による環境優位性の訴求が遅れた場合を想定している。
EV普及で課題になるのがEVの収益性の低さであるという。量販セグメントから低価格な小型車へのシフトが顕著になっており、販売台数が増加しても単価が下落するため収益力が低下するとしている。加えて、コバルトやニッケルなどレアメタルの価格急騰が電池のコストを引き上げ、収益性を圧迫する。米中の対立でサプライチェーンが分断されることもコスト増の課題として顕在化してくると指摘した。
デジタルな管理ができる、動く蓄電池としての価値
自動車が脱炭素の議論のターゲットになるのは、世界のCO2排出量の20%が輸送機器から排出されているためだ。輸送機器のうち45%が乗用車に由来するという。
CO2の削減や排出量の取引においては、デジタルインフラの構築と強化が大前提になると矢野経済研究所は指摘した。自動車に関しては、駆動用バッテリーを蓄電池とみなし、太陽光発電や住宅設備などとともに、VPP(バーチャルパワープラント、仮想電力発電所)としてまとめて管理することで、モビリティにとどまらない価値に高められるという。こうしたコンセプトに内燃機関車は適さないとしている。
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