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30%の省エネ化を実現し水素ガスに対応したGC、小型で2種類のカラムを収納可能JASIS 2023

島津製作所は、「JASIS 2023」(2023年9月6〜8日)に出展し、新製品のガスクロマトグラフ「Brevis GC-2050」やGC質量分析計(GC-MS)「GCMS-QP2050」、マイクロプラスチック自動前処理装置「MAP-100」を披露した。

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 島津製作所は、「JASIS(Japan Analytical & Scientific Instruments Show)2023」(2023年9月6〜8日)に出展し、新製品のガスクロマトグラフ(GC)「Brevis GC-2050」やGC質量分析計(GC-MS)「GCMS-QP2050」、マイクロプラスチック自動前処理装置「MAP-100」を披露した。【訂正あり】

35%の省スペース化を実現

 Brevis GC-2050は、同月4日に発売されたGCで、大きな特徴は、省スペース化、省エネ化、代替キャリア対応の3点だ。同製品は、自動試料注入装置(オートサンプラー)を接続時でも、横幅350mmという省スペースを実現しており、従来機種「Nexis GC-2030」と比べて横幅を35%削減できている。コンパクトなサイズにもかかわらず、2種類のカラムを収納可能で、2種類のサンプルを同時に分析でき、2倍の生産性が得られる。GC-MSや前処理装置のヘッドスペースサンプラーの後付けにも対応し拡張できる。


ガスクロマトグラフ「Brevis GC-2050」[クリックで拡大]

 GCの形状を小型化することで使用電力のロスも削減した。そのため、「GC-2014」やNexis GC-2030と比べて消費電力を約30%低減している。同社の説明員は「企業の品質管理部門では数十台のGCが設置されおりて、1カ月当たりの電気料金が50万円を超えるケースもあるため、消費電力の削減はコストカットに大きく役立つ」と強調する。

 加えて、オプションの「ガスセレクタ」と専用のセンサーを取り付けると、ガスの漏れを検知できる他、初心者でもガスボンベをつなぎ替えることなく、ヘリウムガスの代わりに簡単に水素や窒素のガスを使える。さらに、ガスの残量が少なくなった時はガスボンベを自動で切り替えられ、ガス不足による作業中断を防げる。説明員は「GCで一般的に使用されるヘリウムガスは近年価格が高騰しており、入手が難しくなっているため、ヘリウムガスの使用量の削減と水素や窒素といった代替ガスによる分析のニーズが高まっている」と語った。

 操作性に関して、同製品は、今までは装置本体から行っていた分析操作や装置状態の確認作業をタブレット端末で行える「リモートディスプレイ機能」を備えている。リモートディスプレイ機能では、メンテナンス動画やFAQ(よくある質問と回答)も閲覧でき、初心者でも的確にメンテナンスが行える。開始前に自動コンディショニングが行える「クリーンパイロット機能」も搭載している。クリーンパイロット機能は、装置が自動で試験開始に適した状態を設定するため、初心者でもより安定した分析結果が得られる。

 分析性能について「当社のハイエンド機種であるNexis GC-2030には少し劣るものの、GC-2014よりは高い分析性能を持つ」と説明員は述べた。Brevis GC-2050の販売希望価格は250万円(税別)からで、目標販売台数は発売後1年間で国内外合わせて1000台としている。

 GCMS-QP2050は、2023年度内の発売を予定している開発中のGC-MSで、Brevis GC-2050とNexis GC-2030の専用機種となっている。特徴は、省スペース化、省エネ化、イオン源ボックスのメンテナンス性だという。同製品は従来機より横幅を30%削減し、消費電力を20〜30%カットしている。


「GCMS-QP2050」(左)と接続した「Brevis GC-2050」(右)[クリックで拡大]

 イオン源ボックスのメンテナンス性について、GCMS-QP2050のイオン源ボックスはネジを緩めるためのドライバーと専用治具の2つで取り外しと取り付けが行えるため、洗浄などがしやすい。説明員は「従来機では6つの工具を使わないとイオン源の取り外しと取り付けが行えなかった」という。また、有線のLANケーブルで接続した複数台のGCMS-QP2050を1台のPCで操作することにも対応している。

【訂正】初出時に発売前の「GCMS-QP2050」の一部内容で非公表の箇所があり、その部分を削除しました。

MAP-100の概要

 MAP-100は、2023年8月31日に発売された製品で、マイクロプラスチックの抽出/回収工程を世界で初めて自動化しているという(同社調べ)。

 作業手順は、まず海でマンタネットにより採取した海水を同製品内の反応容器に入れる。次に、スタートボタンを押すことで、あらかじめセッティングした過酸化水素を自動で注入し、約3日間をかけてマイクロプラスチック以外の物質を溶かす。その後、比重分離溶液であるヨウ化ナトリウム水溶液を反応容器に注ぎ、反応容器の下部にヨウ化ナトリウム水溶液が、上部にマイクロプラスチックを含んだ海水が蓄積される。これにより、反応容器の上のチューブを通してマイクロプラスチックを含んだ海水を押し出して、網目のサイズが300μmの網で受け止めることで、海水内のマイクロプラスチックを抽出する。説明員は「最小で300μmのマイクロプラスチックを採取できる。それ以下のサイズのマイクロプラスチックの状態や種類を調べる際にはラマン分光計の使用を推奨している」と話す。


「MAP-100」、機体中央のボトルが反応容器でチューブでつながった網がマイクロプラスチックを受け止める[クリックで拡大]

 さらに、海水の反応容器内への注入やヨウ化ナトリウム水溶液のセッティングなどを除き、ほとんどの作業がスタートボタンを押すだけで自動で行われる。「MAP-100では、ISO認証化を目指し当社がリードするマイクロプラスチックの前処理の標準シーケンス(作業手順)をインプットすることで、ほとんどの作業を自動化している」と説明員はコメントした。この前処理は環境省の「河川・湖沼マイクロプラスチック調査ガイドライン」に準拠している。

 加えて、同製品の制御ソフトウェアはシンプルな画面で構成され、各条件を直感的に設定できる。そのため、処理の進捗状況や完了予定時刻を確かめられるため、業務効率を高められる。これにより、試料に含まれる夾雑物の量や状態によって異なる酸化処理の時間などの条件設定に対応できる。

 MAP-100の希望販売価格は200万円(税別)からで、販売目標は発売後1年間で国内外合わせて20台としている。


「MAP-100」のソフトウェアのイメージ[クリックで拡大] 出所:島津製作所

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