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質量分析計のキャリアガスに水素が使える、チューニング時間もAI技術で半減研究開発の最前線

アジレント・テクノロジーは、ライフサイエンスや化学の分析で広く用いられている質量分析計の新製品として、シングル四重極ガスクロマトグラフ質量分析計「5977C」、トリプル四重極ガスクロマトグラフ質量分析計「7000E」「7010」、トリプル四重極液体クロマトグラフ質量分析計「6475」を発表した。

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 アジレント・テクノロジーは2022年6月9日、オンラインで会見を開き、ライフサイエンスや化学の分析で広く用いられている質量分析計の新製品として、シングル四重極ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)「5977C」、トリプル四重極ガスクロマトグラフ質量分析計「7000E」「7010」、トリプル四重極液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)「6475」を発表した。GC/MSの5977Cと7000E、7010は同年6月中旬に受注を、8月上旬に出荷を開始する。LC/MSの6475は、8月1日に受注を、11月上旬に出荷を開始する予定である。

アジレント・テクノロジーの質量分析計の新製品
アジレント・テクノロジーの質量分析計の新製品。「SWARM Autotune」は「7000E」「7010」「6475」で、「HydroInert」は「5977C」と7000Eで採用されている[クリックで拡大] 出所:アジレント・テクノロジー

 今回発表した新製品の特徴は、AI(人工知能)ベースの質量分析(MS)チューニングとキャリブレーションが可能な「SWARM Autotune」と、研究開発分野で長らく課題になっているヘリウム不足に対応して水素キャリアガスを利用できるイオン源技術「HydroInert」の2つである。SWARM Autotuneは、7000Eと7010、6475で、HydroInertは5977Cと7000Eで採用されている。

 SWARM Autotuneは、質量分析計のプロセスで最も手間の掛かる作業といわれているチューニングとキャリブレーションに掛かる時間を半減させられる機能である。これまでは、1つのパラメータを変更すると、そのパラメータ変更が他の全てのパラメータに影響するため、全てのパラメータを1つずつ何度も変えながら調整する必要があった。SWARM Autotuneでは、パーティクルスウォーム最適化と呼ぶ自己学習アルゴリズムを適用することで、より効率的にパラメータ調整を行えるようにした。

「SWARM Autotune」の機能イメージ
「SWARM Autotune」の機能イメージ[クリックで拡大] 出所:アジレント・テクノロジー

 LC/MSの6475では、SWARM Autotuneの他、ラボに出勤したタイミングからすぐに分析作業を始められるようにあらかじめ装置メンテナンスを終わらせられるメンテンナス自動化や、メソッド開発の自動化、サンプル測定の品質保証やスループット向上につながる新機能も追加されている。

 一方、HydroInertは、世界的な供給不足が指摘されているヘリウムに代えて、水素をGC/MSのキャリアガスとして利用できるようにする新開発のイオン源である。不活性ガスであるヘリウムと比べて水素は、イオン源内で分析対象の化合物が水素化を起こしてしまうという課題がある。この水素化は、加熱と金属による触媒反応という2つの要素によって発生するが、HydroInertはイオン源の金属に表面コーティングを施すことで金属による触媒反応を抑えた。

水素キャリアガスに対応する新イオン源「HydroInert」
水素キャリアガスに対応する新イオン源「HydroInert」[クリックで拡大] 出所:アジレント・テクノロジー

 例えば、ニトロベンゼンの質量分析で水素キャリアガスを使うと、通常のイオン源では水素化で発生するアニリンのピークが大きく出てしまい、分析対象であるニトロベンゼンのピークが小さくなってしまう。HydroInertを用いると、ニトロベンゼンの水素化反応が抑えられ、ヘリウムキャリアガスを使う場合と同様の分析結果が得られるという。この他、水素キャリアガスで発生するテーリング(ピーク終端の裾が大きくなること。他のピークが隠れて見えなくなるなどの問題がある)の抑制も可能だとしている。

「HydroInert」の分析結果
「HydroInert」はニトロベンゼンの水素化を抑えてヘリウムキャリアガスを使う場合と同様の分析結果が得られる[クリックで拡大] 出所:アジレント・テクノロジー
「HydroInert」は水素キャリアガスによるテーリングも抑えられる
「HydroInert」は水素キャリアガスによるテーリングも抑えられる[クリックで拡大] 出所:アジレント・テクノロジー

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