ラボの分析機器にもDXを、CBMによる予防保全とAR活用リモートサポートを提供:研究開発の最前線
アジレント・テクノロジーが同社の分析機器向けに提供しているデジタルツールについて説明。ダウンタイムの短縮や修理コストの削減などにつながる予防保全のための「Smart Alerts」や、AR技術を用いたリモートサポートアプリ「CrossLab Virtual Assist」などの展開を2021年から推進しており、分析機器を活用するラボにおけるDXを支援する。
アジレント・テクノロジーは2021年10月14日、オンラインで会見を開き、同社の分析機器向けに提供しているデジタルツールについて説明した。ダウンタイムの短縮や修理コストの削減などにつながる予防保全のための「Smart Alerts」や、AR(拡張現実)技術を用いたリモートサポートアプリ「CrossLab Virtual Assist」などの展開を2021年から推進しており、分析機器を活用するラボにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する。
同社 サポートサービス事業部 ビジネスディベロップメントマネージャ South Asia Pacific, Korea, Japanの田中有理氏は「ラボの研究者にデジタルネイティブ世代が増えつつある中で分析機器にもデジタルツールを増やしていく必要がある。また、労働人口の減少と、それに伴う予防保全の重要性の高まりに対してもデジタルツールは有効に働く」と語る。
同社が2021年から展開を強化しているデジタルツールは3つある。1つ目のSmart Alertsは、分析機器の予防保全を実現するソフトウェアだ。分析機器とネットワーク接続する管理PCにインストールすることで、各機器の使用状況に合わせて推奨メンテナンス時期をメールで通知してくれる。いわゆるCBM(状態基準保全)による予防保全が可能になる。
同社の3万8000台以上の機器のサービス履歴5年分の調査結果では、的確なタイミングでメンテナンスを行うことにより、機器のダウンタイムを年間で3.4日、不測の修理を35%、修理費用を平均で41%削減できるという。Smart Alertsを利用することで、この“的確なタイミングでのメンテナンス”を行えるようになるというわけだ。他にも、ウイークリーシステムサマリーレポートによる装置状態の一括確認や、メンテナンス/エラー履歴の自動記録、消耗品を登録しての管理などの機能を提供する。価格(税別)は、年間契約で1接続(機器1台)当たり1万4400円となっている。
Smart Alertsがあっても完全に修理をなくすことはできない。そこで役立つ2つ目のデジタルツールが、修理などのサポートによるダウンタイムを最小化できるCrossLab Virtual Assistだ。タブレット端末などを用いて、ユーザーが見ている分析機器の状態を、遠隔にいるアジレントのサポートスタッフが映像としてリアルタイムに共有できるので、電話やチャットなどによる対応よりも正確な診断を行ったり、現地に訪問することなく問題を解決できたりする。
PTCのARソフトウェア「Vuforia Chalk」を用いており、空間認識した対象機器に対してサポートスタッフの指示やユーザーの確認のための書き込み位置が固定されるので使いやすいという。
3つ目はユーザーコミュニティーである「Agilent Community」と各機器の運用に関するノウハウなどを集積したナレッジデータベースだ。Agilent Communityでは、世界中のユーザーに質問してチャット形式で情報交換ができるが、日本のユーザーにとっては英語ベースで行われるやりとりがハードルになっていた。2021年から、段階的にAI(人工知能)翻訳機能を導入しており「少しタイムラグはあるが双方向での翻訳を自動で行ってくれる」(田中氏)という。Agilent Communityとナレッジデータベースにより、その場でユーザー自身で問題を解決する“セルフサーブ”につなげられるとしている。
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