マイクロプラスチックの真の影響を見定めるために、「LDIR」で測定時間を短縮:研究開発の最前線(1/2 ページ)
アジレント・テクノロジーが、環境問題として注目を集めるマイクロプラスチックについて解説。併せて、高速自動分析が可能な同社の赤外イメージング技術「LDIR」を紹介した。
アジレント・テクノロジーは2020年2月20日、東京都内で会見を開き、環境問題として注目を集めるマイクロプラスチックについて解説するとともに、高速自動分析が可能な同社の赤外イメージング技術「LDIR」を紹介した。
科学的に確かなマイクロプラスチックの測定手法が確立されていない
マイクロプラスチックとは、その名の通りμmサイズの微小なプラスチック(樹脂)のことだ。水に不溶であり、生物の口の中に容易に入り得る1μm〜5mmの大きさのものを指すことが多い。
製造起源によって、大まかに一次的マイクロプラスチックと二次的マイクロプラスチックの2種類に分かれる。一次的マイクロプラスチックは、特定の用途として意図的に製造されたもので、産業用の研磨剤、化粧品や洗顔料、歯磨き粉に使うマイクロビーズなどがある。二次的マイクロプラスチックは、より大きなプラスチックごみや破片の劣化によって間接的に算出されるものになる。管理の不十分なプラスチックごみの光分解や風化によって生じることもあれば、塗料の剥落、タイヤの摩耗、化学繊維を用いた衣類の洗濯などによって生成される場合もある。
2010年代に入ってからマイクロプラスチックや海洋プラスチックによる環境問題に大きな注目が集まるようになっているが、現代社会の利便性にプラスチックの需要は引き続き旺盛だ。WHO(世界保健機関)によれば、2015年時点毎年3億2200万トンのプラスチックが生産されており、今後20年で倍増する見込みだという。また、2050年には、海にすむ魚の重量を、海洋プラスチックの重量が上回るという予想もある。
プラスチック製品は可塑剤や難燃剤などと組み合わせることで、さまざまな機能性が付与されている。これらの付加材料を持ったマイクロプラスチックは、食物連鎖に入り込み、環境や動物、そして人間に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、日本化粧品工業連合会は2016年にマイクロビーズ使用の自主規制を要請しており、2019年6月開催の「G20大阪サミット」では海洋プラスチックごみによる新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が参加国間で共有された。これに合わせて日本では、2020年7月からのレジ袋有料化の義務付けが決まった。
このように、社会問題として大きく取り上げられたこともあり、先進国を中心にでプラスチックごみの排出を抑制する取り組みが急ピッチで進んでいる。ただし、科学的に確かなマイクロプラスチックの測定手法が確立されていないこともあり、その真の影響を調査することが難しい上にあるのも事実だ。
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