マイクロプラスチックの真の影響を見定めるために、「LDIR」で測定時間を短縮:研究開発の最前線(2/2 ページ)
アジレント・テクノロジーが、環境問題として注目を集めるマイクロプラスチックについて解説。併せて、高速自動分析が可能な同社の赤外イメージング技術「LDIR」を紹介した。
FTIRならぬ「LDIR」で微粒子1個当たりの測定時間は数秒で完了
マイクロプラスチックの測定手法を確立するには、この問題に取り組んでいる研究者かからさまざまな研究結果が報告される必要がある。これらの研究結果の基となる測定データが多数積み上がることで、測定手法の標準化につなげられるからだ。
アジレント・テクノロジー 営業本部 市場開発グループ スペクトロスコピー担当 マーケティングマネージャーの遠藤政彦氏は「マイクロプラスチックの中でも重要視されているのは100μm以下のものだ。この微小なサイズのプラスチックを短時間かつ高精度、そして自動で分析できることが求められている」と語る。
これまで100μm以下の微小なプラスチックの測定は、顕微鏡FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)が用いられていた。ただし微粒子1個当たりの測定に1分以上はかかるという。研究を進めるためには、例えば海や河川のさまざまな場所から採取してきた膨大な数のサンプルを測定しなければならないが、その測定に時間がかかっていたというわけだ。
アジレント・テクノロジーの「Agilent 8700 LDIR」は、このマイクロプラスチック分析の測定時間を大幅に短縮できる。同社が独自で開発・製造するQCL(量子カスケードレーザー)を用いた光学系の採用により、FTIRではない「LDIR(Laser Direct InfraRed)」として製品化した。シンプルで使いやすい分析ソフトウェアとの組み合わせにより、微粒子1個当たりの測定時間は数秒で完了する。「実際には微粒子を1個ずつ測定するのではなく、指定した領域にある全ての微粒子についてスキャン測定することになる。10×10mmの領域をピクセルサイズ5μmでスキャンする場合の所要時間は4分と短い」(遠藤氏)。
もともとは、医薬品メーカーが錠剤内にある成分を分析する用途に向けて開発されたAgilent 8700 LDIRだが、現在はマイクロプラスチック分析の引き合いも多くなっている。研究開発用の測定機器であるため価格は3800万円となっているが、日本政府もマイクロプラスチック対策への取り組みを強化する方針を示しており「導入が進む期待は大きい」(遠藤氏)という。
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