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2年ぶりに前年超えの2023年上期の新車生産、中国は苦戦で陰り自動車メーカー生産動向(4/4 ページ)

半導体不足などサプライチェーンの混乱で低迷した自動車生産が着実に回復している。日系乗用車メーカー8社の2023年上期の世界生産合計は、8社全てが増加し、2年ぶりに前年実績を上回った。半導体不足の緩和に加えて、前年が中国・上海のロックダウンの実施により低迷した反動増が表れた。

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マツダ

 上期の生産で最も回復基調を示したのがマツダだ。2023年上期のグローバル生産台数は、前年同期比23.9%増の60万9942台と2年ぶりに増加した。前年が半導体不足や中国からの部品供給不足が響いた反動が表れた。加えて代替え部品の確保により半導体不足の影響を和らげたことが奏功した。とはいえ、半導体不足は依然として続いていることや、中国での販売低迷などもあり、コロナ禍前の2019年上期との比較では18.4%減にとどまった。

 世界生産の3分の2以上を占める国内生産は、同25.2%増の41万5718台と2年ぶりにプラスへ転じた。半導体の供給改善や前年の中国からの部品供給不足の反動などが要因となった。車種別では「CX-5」は同7.4%増、「マツダ3」が同44.5%増、「CX-30」も同25.1%増と主力モデルがそろって伸長した。

 地域によって明暗が分かれたのが海外生産だ。北米は、メキシコが半導体関連部品の代替えを進めた他、前年に36日間の稼働停止を実施したこともあり、同66.1%増と増加した。さらに2022年1月に稼働した米国工場が本格稼働し、同2.6倍と伸長。北米トータルでは同78.9%増と大幅な伸びを見せた。タイも日本市場向け「CX-3」の生産開始などもあり、同8.3%増とプラスを確保した。

 一方、厳しいのが中国で、前年同期比47.5%減と半減した。マツダでは中国市場での販売低迷を受けて、一汽乗用車での「マツダ6」と「CX-4」の生産委託を4月に終了した。これにより中国における生産拠点は長安マツダ汽車のみとなる。長安マツダでは、マツダ3、CX-5、CX-30に加えて、6月から新たに「CX-50」の生産を開始した。中国の低迷を北米がカバーした結果、上期の海外生産は、同21.1%増の19万4224台と5年ぶりにプラスへ転じた。

 年明け以降、回復傾向が続いていたマツダだが、6月単月のグローバル生産台数は前年同月比5.1%減の9万8971台と5カ月ぶりに減少へ転じた。このうち国内生産は同6.5%減の6万8503台と5カ月ぶりに前年実績を下回った。車種別では主力モデルのCX-5が同14.7%減と低迷。ただ、マツダ3は同50.0%増、新型車「CX-60」は同3倍超と台数を増やした。

 海外生産も、前年同月比1.6%減の3万468台と5カ月ぶりのマイナス。北米は、メキシコが前年に4日間の稼働停止を実施した反動や部品供給の改善により同30.7%増と増加し、米国もCX-50の生産本格化で同29.4%増と伸長した。ただ、中国は需要低迷による生産調整と一汽乗用車への生産委託の終了により同54.4%減と低迷。タイも「マツダ2」やマツダ3の在庫調整により同9.3%減と減少した。

三菱自動車

 三菱自の2023年上期のグローバル生産台数は、前年同期比7.0%増の50万2944台と2年ぶりに前年実績を上回った。このうち国内生産は、同21.2%増の23万9515台と2年ぶりに増加した。前年が中国からの部品供給難で低迷した他、エアバッグ不具合で「eKスペース」および日産向けにOEM供給する「ルークス」の生産を停止していた反動が表れた。加えて、北米向け「アウトランダー」の好調や、軽自動車タイプのEV「eKクロスEV」および日産「サクラ」の好調や、軽の新型車「デリカミニ」の純増などもプラスにつながった。

 一方、海外生産は伸び悩み、前年同期比3.2%減の26万3429台と2年連続で減少した。インドネシアは同17.2%増と好調だったものの、主力拠点のタイが同6.3%減だった。中でも厳しいのが中国で、新型「アウトランダー」の深刻な販売不振により、3月から現地生産を停止。その結果、同78.2%減と中国で生産する5社で最大の落ち幅となった。

 足元の状況も同様だ。6月単月のグローバル生産は、前年同月比5.8%増の8万7584台と4カ月連続のプラスとなった。このうち国内生産は同23.5%増の4万3271台と7カ月連続で増加した。北米向け輸出や軽EVの好調、デリカミニの純増の他、「デリカD:5」の販売増も貢献した。一方、海外生産は、同7.1%減の4万4313台と4カ月ぶりのマイナス。インドネシアは同14.7%増と伸長したが、主力拠点のタイは同2.5%減、中国は生産停止により0台だった。

スバル

 好調を維持しているのがスバルだ。2023年上期のグローバル生産台数は、前年同期比16.4%増の44万5460台と3年連続で前年実績を上回った。前年に比べて半導体不足が緩和したことが要因だが、2019年上期との比較では8.9%減という実績にとどまっており、依然として部品供給の影響が続いていることが伺える。このうち国内生産は同15.2%増の27万6911台と2年ぶりのプラス。海外生産は同18.2%増の16万8549台と3年連続で増加した。

 6月単月のグローバル生産台数は、前年同月比17.8%増の8万2835台と5カ月連続の前年超え。8社の6月の世界生産で最大の伸長率となった。このうち国内生産は、同12.6%増の5万7196台と5カ月連続のプラス。海外生産も同31.2%増の2万5639台と5カ月連続で増加し、8社の海外生産で唯一の2桁パーセント増を記録した。

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