検索
連載

2年ぶりに前年超えの2023年上期の新車生産、中国は苦戦で陰り自動車メーカー生産動向(3/4 ページ)

半導体不足などサプライチェーンの混乱で低迷した自動車生産が着実に回復している。日系乗用車メーカー8社の2023年上期の世界生産合計は、8社全てが増加し、2年ぶりに前年実績を上回った。半導体不足の緩和に加えて、前年が中国・上海のロックダウンの実施により低迷した反動増が表れた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

日産自動車

 日産自動車の2023年上期のグローバル生産台数は、前年同期比5.7%増の168万9033台と2年ぶりに前年実績を上回った。

 要因は国内生産の大幅増で、同46.9%増の34万3367台と2年ぶりにプラスへ転じた。前年の半導体不足による大幅減の反動に加えて、国内向けおよび輸出向け「エクストレイル/ローグ」、国内向け「セレナ」など新型車が貢献した。ただ、半導体不足の影響は続いており、コロナ禍前の2019年上期との比較では15.0%減と、日産の生産能力を考慮すると本格回復には届いていない状況だ。海外生産は、前年同期比1.4%減の134万5666台と2年連続の前年割れだ。

 地域別では、最大市場の中国が、前年がロックダウンで低水準だったが同25.2%減と2年連続のマイナスとなった。これは半導体不足の影響の他、市場のEVシフト、さらに新型車「エクストレイル」が新たに搭載した直列3気筒1.5l(リットル)のターボエンジンの不評で販売が伸び悩んだことが大きい。なお、この台数は小型商用車(LCV)を手掛ける東風汽車(DFAC)の株式売却に合わせ、LCVを除いて前年比を比較した日産独自の集計だ。日産の中国事業として前年実績にLCVを含んで比較すると同34.3%減となる。北米は好調で、米国が同18.4%増、メキシコも同44.6%増。英国も同36.0%増と大幅プラスを確保した。

 足元も傾向は変わらない。6月単月のグローバル生産は、前年同月比0.1%増の29万4468台と5カ月連続で前年実績を上回った。国内生産は、同32.8%増の6万2410台と14カ月連続のプラス。2019年6月との比較でも2.0%減とコロナ禍前の水準近くまで回復している。車種ではエクストレイル/ローグ、セレナがけん引し、輸出も同98.6%増と大きく伸長した。

 海外生産は、前年同月比6.1%減の23万2058台と5カ月ぶりにマイナスへ転じた。中でも中国が厳しく、同39.7%減と大きく落ち込み2カ月連続の減少。なお、前年実績にLCVを含んだ比較では同43.6%減となる。一方、米国は同14.9%増、メキシコは同80.3%増、英国も同31.4%増と、中国以外は好調に推移した。

スズキ

 スズキの2023年上期のグローバル生産台数は、前年同期比2.0%増の158万6771台と3年連続のプラスだった。コロナ禍前の2019年上期との比較では1.5%減にとどまった。貢献したのが国内生産で、同10.4%増の46万7907台と2年ぶりにプラスへ転じた。前年に中国のロックダウンや東南アジアからの部品供給難で生産調整を実施した反動の他、半導体不足の緩和が奏功した。

 海外生産は、前年同期比1.1%減の111万8864台と3年ぶりに減少した。これはパキスタンで2022年12月に導入された新たな輸入外為規制で部品の確保が困難となり生産停止を余儀なくされたことが影響した。なお、同社生産の6割超を占めるインドは同0.2%増と微増で、3年連続で増加した。

 6月単月のグローバル生産台数は、前年同月比4.5%減の24万4484台と2カ月ぶりのマイナスだった。インドが半導体不足などで同5.0%減と2カ月ぶりに減少したのが主な要因。インド以外の海外も同15.7%減と低迷し、海外生産トータルは同7.0%減の16万3994台と2カ月ぶりに前年実績を下回った。

 国内生産も半導体不足により、湖西工場(静岡県湖西市)と相良工場(静岡県牧之原市)で3日間の稼働停止を実施した。ただ、前年同月比では0.8%増の8万490台と微増を確保し、4カ月連続のプラスとなった。

ダイハツ工業

 半導体不足や仕入れ先の火災など、厳しい環境に置かれたのがダイハツだ。2023年上期のグローバル生産は、前年同期比2.4%増の80万3030台と2年ぶりに前年実績を上回った。けん引したのが海外生産で、同8.2%増の40万6545台と3年連続のプラスで、上期の海外生産として過去最高を更新した。新型「アイラ」の投入や部品供給不足が改善したインドネシアが同3.6%増と過去最高を記録。マレーシアも新型「アジア」の投入などにより同17.7%増と伸びを見せ、過去最高となった。

 海外が好調な半面、伸び悩んだのが国内生産だ。前年同期比3.0%減の39万6485台と2年連続で減少した。8社の国内生産で唯一の前年割れとなった。要因としては、半導体不足により滋賀工場(滋賀県竜王町)や大分工場(大分県中津市)、京都工場(京都府大山崎町)で相次ぎ稼働停止を実施。加えて5月19日には、国内向け「ロッキー/ライズ(トヨタ向けOEM)」のHVでポール側面衝突試験の認証手続きに関する不正を発表し、生産を停止している。

 さらに6月18日には、リヤアクスルなどのユニット部品を調達する浅野歯車工作所で工場火災が発生。これにより本社工場(大阪府池田市)や滋賀工場、ダイハツ九州の大分工場(大分県中津市)で最大12日間の稼働停止を余儀なくされた。その結果、登録車の生産が同21.2%減と大きく台数を落とした。なお、軽自動車は2022年の一部改良で押し出しの強いフロントデザインに変更した「タント」や、フルモデルチェンジした「ムーヴキャンバス」などの販売が好調で、同6.2%増となった。

 半導体不足や衝突試験の認証不正、浅野歯車工作所の工場火災などにより、6月の国内生産は前年同月比32.5%減の4万5829台と2カ月ぶりのマイナス。8社の国内生産で最大の落ち幅となった。軽自動車は同25.0%減、登録車に至っては同51.4%減と半減した。また、ロッキー/ライズのポール側面衝突試験の認証手続き不正では、7月にも生産調整を実施するなど、足元ではしばらく厳しい状況が続くことが予想される。

 海外生産も、前年同月比5.6%減の6万3658台と2カ月ぶりに前年実績を下回った。マレーシアは好調だったものの、インドネシアが前年に高い伸びを示したこともあり同10.6%減と減少した。その結果、6月の世界生産は、同19.1%減の10万9487台と2カ月ぶりのマイナスとなり、8社では最も厳しい実績となった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る