ニュース
ミリ波帯電磁波を高効率で吸収する薄膜軽量フィルムを開発:材料技術
東レは、5G通信などに利用されるミリ波帯電磁波を高効率で吸収する、薄膜かつ軽量のミリ波吸収フィルムを開発した。搭載機器の軽量化や製品設計の自由度向上に寄与する。
東レは2023年8月4日、5G通信などに利用されるミリ波帯電磁波を効率よく吸収する、薄膜かつ軽量のミリ波吸収フィルムを開発したと発表した。
同フィルムは、20dB(90%)以上の優れたミリ波吸収性能を備えており、ミリ波モジュールを搭載する5G関連機器の電磁波障害を解消する。また、従来品比で厚さ5分の1、重さ10分の1と薄くて軽いため、搭載機器の軽量化や製品設計の自由度向上に役立つ。
ミリ波を吸収する電磁波吸収シートは、吸収力の高さを求めると重さや厚さが増し、搭載機器の高重量や設計自由度の低下を招いていた。
この課題に対応するため、同社は独自のナノ積層技術を応用し、低誘電体層と高誘電体層を交互に重ねて、フィルムを多層構造にした。これにより、高い吸収性能と大幅な薄膜化、軽量化を兼ね備えるミリ波吸収フィルムの開発に成功した。また、同フィルムは、厚みを変化させることで、周波数20G〜100GHzの範囲で任意の周波数を吸収できる。
ミリ波を用いた5G通信には、4G通信と比べて100倍の高速大容量であること、遅延が20分の1と少ないこと、多点同時接続などのメリットがある。その一方で、直進性が強いことから反射や干渉による電磁波障害が生じるデメリットもある。電磁波障害の対策には電磁波吸収シートが使われるが、既存品は電磁波を吸収する金属粒子を大量に添加するため重く、吸収性を高めるには厚さを数mmにする必要があった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- リチウムイオン電池からリチウムを高収率でリサイクル、東レがNF膜で実現へ
東レは、「nano tech 2023」において、使用済みリチウムイオン電池から高収率でリチウムを回収できるNF膜を披露した。 - 繊維、紙、パルプ業界の特許けん制力ランキング、トップは東レ
パテント・リザルトは「繊維・紙・パルプ業界 他社牽制力ランキング2022」を発表した。1位が東レ、2位は東洋紡、同数3位が王子ホールディングスと帝人だった。同ランキングは、企業の技術的な先進性を判断する指標になる。 - 東レがマレーシアでABS樹脂の生産増強、グループで年産42万5000トンに
東レのマレーシア子会社Toray Plasticsは、「ABS樹脂トヨラック」透明グレードの生産能力を増強し、本格生産を開始した。既存の東レ千葉工場と合わせると、東レグループ全体の生産能力は年産49万7000トンまで拡大した。 - 東レが韓国の子会社でPPS樹脂の生産能力を年産5000t増設、2024年12月に稼働開始
東レは、韓国の100%子会社である東レ尖端素材の群山工場において、PPS樹脂「トレリナ」の生産能力を年産5000t(トン)増設する。2024年12月の稼働開始を目指し、PPS樹脂の世界的な需要拡大に応じる。 - NECと東レ、製品の品質検査情報をデジタル化する品質データ基盤を構築
NECと東レは、製品の品質検査情報をデジタルデータで収集、共有する品質データ基盤を共同で構築した。人手を介さずに情報が共有できるので、品質保証業務が効率化され、品質検査情報の信頼性も向上する。 - 東レが廃棄ガラス繊維強化PPS樹脂のリサイクルプロセスを欧州で構築
東レは、欧州で射出成形工程により廃棄されるガラス繊維強化PPS樹脂のリサイクルプロセスを確立した。バージン原料で製造した射出グレードに比べて90%以上の機械強度を確保したほか、カーボンフットプリントを約45%削減できる。