AIカメラではんだ不良を検出、エッジ処理でレイテンシーも低減:製造現場向けAI技術
ソニーセミコンダクタソリューションズは「ハノーバーメッセ(Hannover Messe)2023」において、AIカメラを活用したはんだ付け不良の検出デモンストレーションを披露した。
高シェアのスマートフォン向けをはじめイメージセンサー事業を展開するソニーセミコンダクタソリューションズが、事業拡大に向けて注力しているのが産業機器向け分野だ。工場などモノづくりの現場では、イメージセンサーを搭載するカメラを用いた外観検査が広く利用されているが、近年はAI(人工知能)技術の進化によりAIカメラを用いたより高度な外観検査への取り組みが進んでいる。
そこで同社が、「ハノーバーメッセ(Hannover Messe)2023」(2023年4月17〜21日:現地時間、ハノーバー国際見本市場)のマイクロソフトのブース内で披露したのが、AIカメラを活用したはんだ付け不良の検出デモンストレーションである。
同社では2020年5月にイメージセンサーにAI処理機能を搭載したインテリジェントビジョンセンサー「IMX500」「IMX501」を発売した。イメージセンサーで取得した画像データを即座にAI処理できるためレイテンシを小さい上に、AI処理によって得たメタデータのみを出力することによる扱うデータ量の削減や消費電力の削減、プライバシーへの配慮も可能になる。
「イメージセンサーにAI処理ができるDSPを貼り合わせて1チップにしている。AIの開発環境はわれわれよりも得意なプレイヤーはいるが、デバイスに強みがあるのがソニーの特徴だ。外部にハイパワーなCPUやGPUがなくても個体認識などができ、はんだ不良も検出できる」(ソニーセミコンダクタソリューションズの説明員)。
実際に小型ボードコンピュータ「Raspberry Pi(ラズパイ)」の生産工程にも活用されているという。ソニーセミコンダクタソリューションズは英国のRaspberry Pi財団への出資も発表している。
同製品を用いたソリューションの構築に向けてマイクロソフトとの協業をスタートさせており、米国のシアトル、中国の上海、日本の品川、ドイツのミュンヘンに共同イノベーションラボを設けて、インテリジェントビジョンセンサーを使ったトレーニングや技術検証を行っている。
また、エッジAIセンシングプラットフォーム「AITRIOS(アイトリオス)」として、AIカメラ上で動作するAIを開発するAIデベロッパーや、AIを活用したセンシングアプリケーションを開発するアプリケーションデベロッパーらに、さまざまな機能を提供している。
「AITRIOSでは、われわれのベースとなるAIモデルを、ユーザーのユースケースに合わせて再トレーニングしたり、再トレーニングしたAIモデルをカメラにデプロイしたりするためのデバイスマネジメント、さらにアプリケーションを作るためのSDK(ソフトウェア開発キット)も提供している。最終的には、パートナーらが開発したAIモデルを販売できるマーケットプレースのような仕組みの構築まで含めて環境の整備を進めようとしている」(同 説明員)
その他、危険エリアへの人の侵入検知のデモンストレーションも披露した。
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