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日本が「使えるお金」は世界何位? 家計や企業などの可処分所得を国際比較イチから分かる! 楽しく学ぶ経済の話(4)(5/5 ページ)

勉強した方がトクなのは分かるけど、なんだか難しそうでつい敬遠してしまう「経済」の話。モノづくりに関わる人が知っておきたい経済の仕組みについて、小川さん、古川さんと一緒にやさしく、詳しく学んでいきましょう!

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現役世代の可処分所得を国際比較しよう!

ところで私たちのような現役世代の可処分所得の状況についても、もう少し詳しくなりたいです! 現役世代での可処分所得を国際比較したデータなどはないですか?


実は家計の可処分所得は、世帯ごとに集計されるため、正確に条件を合わせての比較は難しいのです。


ただ、参考になるデータとして等価可処分所得をご紹介しましょう。


等価可処分所得? 一体、何でしょうか?


世帯ごとに集計される可処分所得について、世帯人数の平方根(√)で割って調整した数値です。これにより、世帯人数の違いを調整して単一の指標で水準を比較できることができます。



図8:18〜65歳の等価可処分所得平均値(2018年)[クリックして拡大] 出所:国民経済計算を基に筆者作成

上のグラフでは、OECD各国における家計の等価可処分所得を比較しています。2018年の現役世代(18〜65歳)について比べてみたものですね。


日本は4万ドル弱(約572万円)で韓国と同じくらいのようです。このように比べると、日本の現役世代の所得はOECDの平均値にも届かない水準ということですね。


それにしてもグラフ内の用語はまたしても聞きなれないものばかりですね。また新しい用語……?


そういうわけでもありませんよ。給与所得は雇用者報酬、事業所得は営業余剰、経常移転給付は社会保障給付、経常移転負担は税や社会保障負担に対応すると考えられます。すると、どこかで見たのと同じ構造に見えてきませんか?


あ、図2の「家計における第1次所得の配分勘定・所得の第2次分配勘定」と同じです! そうか、集計で使う用語や定義がやや異なっているだけなのですね。


そういうことです。さて、この等価可処分所得を見ると、各国の特徴がいろいろと見えてきますね。


どの国も給与所得が大きな収入源という事は共通していますね。上位の国ほど給与所得が高い事が分かります。


ええ。日本は37か国中21番目と下位グループになりますが、順位の割には給与所得が高めです。裏を返せばその他の事業所得や財産所得、経常移転給付が順位のわりに少ないという事になります。


なるほど! 先進国の中でも同水準の韓国やフランスと比べるととても興味深いですね。


ところで、等価所得で全体を見るわけですから、失業者や単身者などもこの数値に入りますよね。


はい。例えばフランスは平均給与で言えば日本より少し高いレベルですが、失業率が高いこともあり、等価で見た給与所得は日本より低くなっています。一方で、経常移転給付や財産所得が日本よりも多く、正味の可処分所得では日本より上位にあるわけですね。


なるほど! 働く人の給与だけでなく、失業率や再分配まで含めた水準を比較できるということですね。


まとめると、日本は先進国の中で平均給与が低い一方で、失業率も低いのが特徴ですね。そして再分配が相対的に少ない分だけ、可処分所得の水準は先進国でも低位にあるということになりそうです。


そうですね。等価可処分所得は所得格差であるジニ係数や、相対的貧困率を計算する際にも利用されます。日本は先進国の中でも再分配後の所得格差が比較的大きく、相対的貧困率も高い、という統計結果もあります。


可処分所得を巡る日本の状況をより身近なものとして理解できるようになりました!


今回はここまでとしましょう。次回は、消費と貯蓄についてお話させていただきます。


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⇒本連載の目次はこちら
⇒連載「『ファクト』から考える中小製造業の生きる道」はこちら
⇒連載「小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ」はこちら

筆者紹介

小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役

慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。

医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業等を展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。


監修者紹介

古川拓(ふるかわ たく)
TOKYO町工場HUB 代表

京都大学法学部卒。バンカーとして日米で通算15年間勤めたのち、2004年に独立。技術と創造力で社会課題の解決を促すソーシャルデザイン/プロデュースの道を進む。自ら起業家として活動しつつ、ベンチャーファンドの取締役、財団理事等を歴任し、国内外で活動してきた。

2017年よりスタートアップのエコシステム構築を目指すTOKYO町工場HUBの事業を開始。さらに2022年より和文化(工芸、芸能、食文化)を海外向けにプロデュースするTokyo Heritage Partnersを立ち上げ、現在に至る。

2009年〜2020年:東京大学大学院新領域創成学科の非常勤講師(持続可能な社会のためのビジネスとファイナス)を務めた。現在、東京都足立区の経済活性化会議他、東京観光財団エキスパート(ものづくり分野担当)、各種審議委員会の委員を務める。


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