帝人はアラミド工場火災の影響が残り営業利益6割減、通期予想は据え置く:製造マネジメントニュース
帝人は、2023年度第1四半期の売上高が前年同期比0.4%増の2488億円となるも、営業利益は同60.8%減の42億円になったと発表した。
帝人は2023年8月7日、電話会議システムを用いて会見を行い、2024年3月期第1四半期(2023年4〜6月期)の決算について発表した。
樹脂の販売量はコロナ禍の影響を受けて低迷した前年同期並み
2024年3月期第1四半期の売上高は前年同期比0.4%増の2488億円となるも、営業利益は同60.8%減の42億円となり、親会社株主に帰属する四半期純利益は同74.5%減の19億円となった。帝人 代表取締役社長執行役員 兼 CEOの内川哲茂氏は「2024年3月期第1四半期の営業利益は同利益が落ち込んだ2023年3月期第4四半期(2023年1〜3月期)と比べ62億円増となり回復傾向にある。一方、前年同期と比べ営業利益は大きく落ち込んでいる。この落ち込みの要因になったのは2022年度に発生したアラミド工場の火災や中国の景気回復遅延などだ」と話す。
セグメント別では、マテリアル事業は、アラミドと複合成形材料の収益性改善に向けた施策効果の発現と2022年度に発生したアラミド工場の火災影響からの回復により売上高は増えたが減益となった。売上高は前年同期比1.8%増の1058億円となり、営業損益は前年同期から13億円悪化して20億円の赤字だった。
アラミド繊維では、2022年度に火災が発生した原料工場が復旧するも、生産回復途上のため販売可能量が不足している他、労務費高騰を中心とした工場固定費増、前年度のコスト高による期首在庫高が影響を及ぼした。しかしながら、販売価格改定および天然ガス価格低下が収益を押し上げた。
樹脂では、中国の景気回復遅延や欧米の経済減速により、販売量は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて低迷した前年同期並みとなった。原燃料価格下落で販売価格が低下するも、スプレッド(主原料と製品市況の価格差)はほぼ維持したという。
炭素繊維では、航空機向け用途が販売堅調で、産業向け用途は一部で軟化(販売構成で改善)した。そして、原燃料価格が低下する中、販売価格を維持し利益率を改善した。
複合成形材料では、自動車需要は堅調も、一部プログラムで生産調整があり、販売量は前年同期並みとなった。また、労務費の高騰や補修費などの工場固定費が増加したが、原料インフレに対する販売価格改定の効果が発現しただけでなく、北米で収益性が改善した。
繊維/製品事業では、水処理フィルター向けポリエステル短繊維やインフラ補強材の販売が堅調だった。さらに、北米および中国向けのテキスタイルや衣料品の販売が好調に推移し、国内向けの衣料品も販売が好調に継続し、増収増益だった。
ヘルスケア事業では、医薬品に関して、先端巨大症/下垂体性巨人症/甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腫瘍/膵・消化管神経内分泌腫瘍治療剤「ソマチュリン」や上肢/下肢痙縮治療剤「ゼオマイン」の販売量が順調に拡大した。加えて、2023年1月に上市した骨粗鬆症治療剤「オスタバロ1.5mg」の採用活動を進めた。しかし、2022年6月に痛風/高尿酸血症治療剤「フェブリク」の後発品が参入し販売量が減少した。
在宅医療については、経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)用装置のレンタル台数が増加し、この検査数も前年と比べ回復傾向にある。在宅酸素療法(HOT)用装置のレンタル台数は前年同期並みに高い水準を維持しているという。しかしながら、ヘルスケア事業全体では減収減益となった。
IT事業では、電子コミックサービス「めちゃコミック」で宣伝活動の強化を継続し販売は好調に推移して、増収増益となった。
その他事業では、電池部材分野で、セパレータが好調な販売を継続し、埋込医療機器分野で、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後、手術件数が回復傾向であり、販売量は堅調に推移した。さらに、再生医療分野も堅調に推移し、その他事業全体では微増だが増収増益となった。
なお、マテリアル事業で、複合成形材料の工場設備故障からの復旧は稼働安定化の遅延を見込むも、アラミドの想定以上の原燃料価格低下により、収益性改善施策の効果総額は予定通り発現見込みのため、2023年5月11日に発表した2024年3月期の業績見通しを据え置くという。
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