好調DMG森精機の2023年度上期決算の中身、EV/半導体/積層造形で何を語ったか:2023年1〜6月期決算(2/2 ページ)
DMG森精機は2023年度上半期(2023年1〜6月)の決算について説明。売上高は前年同期比14.4%増の2495億円、営業利益は同27.5%増の226億円だった。2023年度の売上高、営業利益の見通しも上方修正した。
実製品活用を進める金属積層造形、半導体関連も堅調
受注の構成としては一般の機械が21%、航空/宇宙が16%、精密/半導体が16%、EV(電気自動車)/自動車/二輪が16%、金型が12%などとなった。一般機械の中にもEV関連が含まれており、「バッテリー向けに金属粉末を作る粉砕機、高機能フィルムの延伸装置のメーカーなど一般機械の4分の1くらいはEV関連となっている」。テスラにも納入しており、複数部品を一体成型するギガキャストの後加工に使われているという。
調整局面ともいわれる半導体関連について森氏は「われわれは上流に強い。上流の方は言われるほどあまり影響は受けていない」と話す。先日もASMLのトップと面談したと明かし、「彼らは『ジャストインケース(Just in Case)も重要だが、これからはジャストインタイム(Just in Time)だ』と話していた。近い将来、半導体の需要は3倍になる。いつ来るか分からないが、確かに来るその時に向けて着々と準備している」(森氏)。
金属3Dプリンタの実製品活用が進展
同社では5軸マシニングセンタにDED方式のAM(Additive Manufacturing、積層造形)機能を組み込んだ「LASERTEC 65 DED hybrid」、PBF(パウダーベッド)方式の金属3Dプリンタ「LASERTEC 30 SLM」などを展開している。
現在は米国製の部品を90%近く使った「LASERTEC 30 SLM US」を米国政府案件向けに開発している。米国政府調達案件専任の会社も米国内に設けており、「米国政府全体を1つの顧客として納めている。かなり金額が上がってきて、重要な柱になっている」(森氏)。
金属3Dプリンタを巡る環境については米国が一番大きな市場となっているという。2023年度の売上高の目標はDED、PBF合わせて約100億円だが、70億〜80億円になると見込む。2025年度には200億円、2030年度には300億〜400億円に拡大すると見通す。
同社内では金属3Dプリンタ活用が進んでいる。「マシニングセンタのスピンドルに使われるドローバーにこれまで耐久性と滑りをよくするため硬質クロムメッキを施していたが、DED方式の金属3Dプリンタによるハイス鋼のめっきに代える。2023年10月から本格的に始動する。クーラントノズルもSLM方式の金属3Dプリンタで生物由来の面白い形のものを作れる他、配線、配管のカップリングにも使っていく。1台の機械にAMで作られた2、3つの部品が入ってくるようになる」(森氏)。
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