パナソニックが進めるリサイクル工程の自動化、エアコン室外機をAI活用で分解:スマート工場最前線(2/2 ページ)
パナソニックHDなどは、エアコン外装自動分解設備と、分解に必要な情報を蓄積する分解データベースによるエアコン室外機外装自動分解システムを開発し、同設備を導入したパナソニック エコテクノロジー関東を公開した。
AIを活用してビス位置認識してロボットが動作、今後は対応型番の倍増目指す
メーカーや使用状態によってそれぞれ異なるビスの取り外しには、深層学習と画像処理を用いたビス認識技術を構築した。また、多関節ロボット2台がビス外しやカバーの吸着、把持に用いる専用ハンドを開発。分解データベースを用いてメーカー、年代、型番ごとの膨大な製品型番への対応を図った。
コンベヤーで運ばれてきた室外機を正面から3Dカメラで撮影してからRGB画像でビスを抽出し、その後アルゴリズムによってビスの十字溝を認識して中心位置を割り出す。カメラの座標はロボットの座標に変換するが、その際にはカメラやロボットの誤差が許容範囲内に収まるようにキャリブレーションを実施する。ビズ外しハンドを装着したロボットはあたり回転を行ってビスに寄り付いてからビスを外す本回転を実施し、実際にビスが外れているかを検査する。ワークを回転させて同様に左右のカバーも取り外す。
カバーを取り外す際は、作業者が行うようなカバーをゆすって部品同士のはめ込みを外す動作をロボットで再現した。作業者の動作を観察して制御プログラミングに落とし込んだ。ハンドの交換も自動化している。工程の冒頭では、AI OCR(光学文字認識)によって型番を特定し、データベースの情報と照合してビス認識精度を高めている他、データベースになかった型番については、分解中にデータベースを生成する機能を持たせた。
現在、6人の作業者が室外機の分解を流れ作業で行っている。あくまで今回の自動化は作業の一部、限られた型番に対応している。1台の解体に約3分かかっており、作業者が行うよりもまだ時間はかかっている。
ただ、経済産業省の報告によれば、特定4品目の中でテレビや冷蔵庫、洗濯機の回収率が70〜80%台で推移しているのに対して、エアコンは40%に満たず極端に低い状態になっている。言い換えれば、今後、国や自治体のキャンペーンでエアコンの回収率が上昇してきた際にはそれだけ現場への負担が増えることにつながる。
ロボットで分解できるのは天板と正面、左右のカバーの4つの外装で構成されている室外機で、パナソニック エコテクノロジー関東で扱っている室外機の約60%を占めるが、型番登録できているのはパナソニックおよびナショナルブランドのみで全体の約30%となっている。「2023年度はまず対応型番の倍増と解体効率の向上を目指す」(小林氏)。
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