37工場でCO2排出ゼロ化、パナソニックが2024年度までの環境行動計画発表:脱炭素
パナソニック ホールディングスは2022年7月13日、2024年度までのCO2排出量削減目標などを記載した環境行動計画「GREEN IMPACT PLAN 2024」を発表した。同社が発表した2050年までの環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」を実現するためのマイルストーンを具体的に提示した。
パナソニック ホールディングスは2022年7月13日、2024年度までのCO2排出量削減目標などを記載した環境行動計画「GREEN IMPACT PLAN 2024(以下、GIP2024)」を発表した。同社が発表した2050年までの環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」を実現するためのマイルストーンを具体的に提示した。
2024年までにCO2ゼロ工場を37カ所
GIP2024において、2024年度までにGHG(温室効果ガス)プロトコルが定めるスコープ1、2、3の領域で約1634万トンのCO2排出量を削減するという目標が掲げられている。スコープ1、2については、2030年度までに排出量の実質ゼロ化にすることを目指す。スコープ3については、顧客による製品使用時のCO2排出量を約1608万トン削減するとした。
スコープ1、2については、省エネと再生可能エネルギーの導入推進による「CO2ゼロ工場」の拡大に向けた取り組みを推進する。2020年度時点では7工場のCO2ゼロ工場を、2024年度末までに37工場にまで増やす。これによって、約26万トンのCO2排出量削減効果が見込まれる。さらに、2030年には全工場でCO2排出量の実質ゼロ化を達成する。CO2ゼロ化はエネルギー消費量の少ない組み立て工程が多い、パナソニック オートモーティブシステムズの工場などから着手して、パナソニック インダストリーやパナソニック エナジーの工場でも順次取り組みを進める。
パナソニック ホールディングス 代表取締役 社長執行役員 グループCEOの楠見雄規氏は「再生可能エネルギーのコストや安定供給量は国や地域によって異なる。既に率先してCO2ゼロ化を達成した工場をモデルとして、そこで蓄積したノウハウをグローバルに展開する。現状、再生可能エネルギーは国内よりも海外の方が価格も安定しているため、2024年度までは国外工場の再生可能エネルギーの導入を先行して進める」と語った。
1億トンの削減貢献も目指す
さらに、自社製品の使用で抑制したと推定されるCO2排出量を示す「削減貢献量」については、2024年度までに約3830万トン、2030年度までに約9300万トンを達成し、2050年度には約1億トンを目指すとしている。
削減貢献量の拡大を進める上では、「車載向け電池」「ヒートポンプ式温水暖房機」「空室/空調機器の連携制御」「純水素型燃料電池」の4領域を重視する。
車載向け電池では、2030年度までに約5900万トンのCO2削減貢献量達成を目指す。製品競争力を高めるための取り組みとしては、高容量かつ高信頼性、低カーボンフットプリントの電池技術開発を進める。材料革新やべき動率、省人化などによってコスト低減を進めるとともに、原材料のマルチソース化や現地調達率の向上によって安定したサプライチェーンの構築にも取り組む。
ヒートポンプ式温水暖房機については「グローバルでの脱炭素意識の高まりに加えて、欧州グリーン・ディールによる多額の補助金によって温水暖房機への置き換えが急速に進んでいる」(楠見氏)とした上で、2030年度までに約1100万トンのCO2削減貢献量達成を目指す。
今後はチェコ工場での生産体制強化を推進する。また、IoT(モノのインターネット)の遠隔監視によるメンテナンスサービスを提供する他、家庭用エネルギー管理ソリューションや空調機器との連携なども進める。
空室/空調機器の連携制御については、2030年度までに約400万トンのCO2削減貢献量達成を目指す。熱交換気ユニットや体感温度の調整を実現する空調/空室機器の組み合わせによって、エネルギーロスを最適化するソリューションを提供する。除菌や調質、換気に関する独自技術に基づく顧客提案の強化も行う。
純水素型燃料電池については、2030年度までに約600万トンのCO2削減貢献量達成を目指す。2022年4月には、純水素型燃料電池などを活用して工場消費電力を100%まかなうRE100工場の実証施設「H2 KIBOU FIELD」(滋賀県草津市)を稼働開始した。同施設の仕組みを他社にも展開していく方針で、現時点で引き合いも来ているという。今後はコンサルティングやエンジニアリング、サービス網の強化によって、RE100ソリューションを進化させていくとしている。
この他、CO2排出量に関する取り組みとは直接的に関係がないものの、サーキュラーエコノミー促進のための取り組みも加速させる方針だ。工場廃棄物のリサイクル率を2024年度までに99%以上に向上させるとともに、再生樹脂の使用量を2022〜2024年にかけて約9万トンにまで増やす。さらに、サーキュラーエコノミー型事業を家電事業や電動アシスト自転車のシェア事業など13事業に拡大する。
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