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世界最小レベルの特性オン抵抗の酸化ガリウムSBD、月産100万個の量産体制構築材料技術

FLOSFIAは、「TECHNO-FRONTIER 2023(テクノフロンティア2023)」で、独自の成膜技術「ミストドライ法」やこの方法を用いて結晶成長させた酸化ガリウムのパワーデバイスを披露した。

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 FLOSFIAは、「TECHNO-FRONTIER 2023(テクノフロンティア2023)」(2023年7月26〜28日、東京ビッグサイト)内の「第2回 パワーエレクトロニクス技術展」で、独自の成膜技術「ミストドライ法」やこの方法を用いて製造した酸化ガリウム(Ga2O3)のパワーデバイスを披露した。

 同社は2011年に設立した京都大学発のベンチャー企業で、独自開発したミストドライ法をコア技術に据えている。ミストドライ法は、大気圧を用いた工程でナノメートルからミクロンまでの結晶性膜を成膜可能な他、さまざまな半導体基板に成膜できる。

 FLOSFIAの説明員は「ミストドライ法は化学気相成長(CVD)に分類される技術だ。通常のCVDは、ヒーターで成長炉の温度を上げて、真空ポンプで真空にするため、大量のエネルギーを使用する。一方、当社のミストドライ法は常圧で行えて真空ポンプが不要で、成長炉の温度も数百℃で十分なため、通常のCVDと比べ使用するエネルギーが少ない」と話す。

 加えて、同社はミストドライ法で結晶成長させたGa2O3のパワーデバイスの開発に成功している。「当社はミストドライ法で結晶成長させたGa2O3のパワーデバイスを販売することをコア事業としている。Ga2O3は、ワイドバンドギャップ半導体材料で、新素材と呼ばれるシリコンカーバイド(SiC)よりバンドギャップが大きく、ポテンシャルが高い。Ga2O3の良さを100%生かしたパワーデバイスを作れれば、そのパワーデバイスの特性オン抵抗はシリコン(Si)パワーデバイスの7000倍に達し、SiCパワーデバイスの20倍を達成できる見込みだ。当社と協力している京都大学のラボでは既に、ミストドライ法により結晶成長させたGa2O3のダイオード『Schottky Barrier Diodes(SBD)』を開発し、このSBDで世界最小レベルの特性オン抵抗を実現している」と語った。


「GaO SBD」[クリックで拡大]

「GaO SBD」搭載の評価用ボード(左)と大阪府の電源メーカーである和光電研が試作した「GaO SBD」搭載のDCDCコンバーター(右)[クリックで拡大]

 同社は世界初のGa2O3パワーデバイスとしてこのSBDを「GaO SBD」という製品名で製品化しており、2021年には引き合いがある企業に限定してサンプル出荷を開始した。現在はGaO SBD用Ga2O3チップを量産する体制の構築を進めている。量産体制に関しては京都市西京区にある本社 兼 工場でGaO SBD用Ga2O3チップを1カ月間当たり100万〜200万個生産できる体制が整っているという。

 同社の説明員は「GaO SBDをサンプル出荷した企業のうち数社からは『実際に製品に導入する』という声も寄せられている。そういった企業に向けて量産体制の構築を進めている。GaO SBDの販売や社会実装の実績が蓄積された後、さらなる拡販を図っていく。将来はGa2O3を用いたトランジスターの開発にもチャレンジしたい」とコメントした。

 なお、同社は市販されているサファイア基板を購入し、ミストドライ法によりこの基板にGa2O3を結晶成長させてGa2O3のウエハーを生産するまでの半導体前工程を担当し、後工程のパッケージングはパートナー企業に委託しているという。

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