CNNとTransformerを独自に融合、環境変化に強い世界1位の顔認証を支える技術:人工知能ニュース(2/2 ページ)
パナソニック コネクトが同社の顔認証技術とそれらを組み込んだシステムを紹介する説明会を開催した。
独自ノウハウでCNNとTransformerを融合
古田氏は「顔認証技術を用いる実際の現場環境は、明るさがまちまちだったり、カメラを向いていなかったりすることもある。また、年月の経過によって登録時からユーザーの顔が変わっていくが、そうした環境変動や経年変化にも強いことを証明している。どちらかに強いということは他社でもあるが、両方強い企業は珍しい」と説明した。
この実現を支えているのが、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)と注目すべき特徴量抽出に強みを持つ機械学習のモデル「Transformer」を融合させたアーキテクチャである。
パナソニック コネクトによると、CNNは目や鼻などの顔の特徴を抽出して、本人確認を高精度で行えるが、顔の向きが変化すると対応が難しい。一方でTransformerは、顔の向きが変化しても目や鼻など顔の一部分の位置を抽出しやすいものの、本人確認の正確性は低くなる。そこで両者を組み合わせることで、顔向きの変化や逆光環境でも高精度で認識できる顔認証技術を実現することに成功した。CNNとTransformerのアーキテクチャ融合には一定のノウハウが必要で、この点に長年顔認証技術の開発に取り組んできたパナソニック コネクトの知見が生かされており、他社が容易に模倣できない機構を作り上げているという。
顔認証の認証速度を向上させるために、深層学習技術の軽量化にも取り組む。高精度化を目指すと認証速度が遅くなりやすいが、速度と精度を両立する現場で扱いやすい技術開発を目指している。
利用者に配慮したUXデザインについては、ハードウェアだけでなくソフトウェアサービスを含めたユニバーサルデザインを実践している点や、「人間中心設計(HCD:Human Centered Design)」の専門家などが多数在籍している点を挙げた。顔認証の入場/決済サービスや顔認証付きカードリーダーなどでは、デザイン賞を複数受賞した実績もある。ハードウェアの設計については顧客企業が設置しやすく、利用者が使いやすいデザインを心掛けているとした。
パートナー企業との共創活動については、2020年に開始した「顔認証クラウドサービス パートナープログラム」の加入企業が130社以上に上る点などを挙げた。同プログラムには現在、日立製作所やソリトンシステムズなどが加入しており、新製品や新システム、技術開発などで連携している。
古田氏は「研究開発部門と密接に連携することで、顧客の現場ニーズにもすぐに対応しやすい環境が実現できている。認証の精度や速度など、顧客によって求める要件は異なるが、柔軟かつ導入しやすい顔認証システムの提供を目指していきたい」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 外乱影響に惑わされないパナソニックの画像センシング技術、60年の歴史が裏打ち
パナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)が「現場センシングソリューション」の一角を担う画像センシング技術の開発状況について説明。監視カメラの開発から60年以上の歴史を積み重ねてきた同技術を基に、今後はディープラーニング技術との組み合わせによって、より幅広い分野への展開を目指す方針だ。 - 生体認証のグローバル展開に向け、日立とパナソニック コネクトが協業
日立製作所とパナソニック コネクトが、生体認証をグローバルに展開して普及を加速するために協業する。連携に向けた技術検討、検証を進め、さまざまな分野での社会実装を想定したユースケースの開発、実証に協働で取り組んでいく。 - NISTの顔認証ベンチマークテストで世界1位の評価を獲得
パナソニック コネクトの顔認証技術が、NISTの顔認証ベンチマークテストで世界1位の評価を獲得した。経年変化や照明変動、顔向きの変化がある環境でも、高精度に顔認証できる点が評価された。 - マスク対応の顔認証をエッジに組み込み、オムロンが「OKAO Vision」に機能追加
オムロンが、マスクを着用したままでの顔認証が可能なAIを搭載する「OKAO Vision 顔認証マスク対応版 ソフトウェアライブラリ」を発表。入退室管理システムやセキュリティドア、工場設備などのログイン用途に向けて展開し、マスク対応版を含めた顔認証ソフトウェアライブラリの売上高を今後3年間で倍増させたい考えだ。 - 多数の歩行者を瞬間認証、人流を妨げないゲートレス生体認証システム開発
NECは2022年11月30日、R&Dや新規事業創出の戦略や成果を発表するイベント「NEC Innovation Day」を開催した。イベントでは初公開の技術として、従来と比べて多人数のリアルタイム顔認証と人物追跡を可能にする「ゲートレス生体認証システム」などが展示された。 - 東京ドームの入場、決済サービスを担うパナソニックの顔認証技術
パナソニック システムソリューションズ ジャパンは、同社の顔認証技術を活用した入場、決済サービスを東京ドームで運用開始する。入場や店舗での決済をチケットレス化、キャッシュレス化する。