マスク対応の顔認証をエッジに組み込み、オムロンが「OKAO Vision」に機能追加:人工知能ニュース
オムロンが、マスクを着用したままでの顔認証が可能なAIを搭載する「OKAO Vision 顔認証マスク対応版 ソフトウェアライブラリ」を発表。入退室管理システムやセキュリティドア、工場設備などのログイン用途に向けて展開し、マスク対応版を含めた顔認証ソフトウェアライブラリの売上高を今後3年間で倍増させたい考えだ。
オムロンは2022年4月19日、オンラインで会見を開き、マスクを着用したままでの顔認証が可能なAI(人工知能)を搭載する「OKAO Vision 顔認証マスク対応版 ソフトウェアライブラリ」を発表した。同月20日に提供を始める。入退室管理システムやセキュリティドア、工場設備などのログイン用途に向けて展開し、マスク対応版を含めた顔認証ソフトウェアライブラリの売上高を今後3年間で倍増させたい考えだ。
オムロンが1995年から顔画像センシング技術として展開してきたOKAO Visionは、携帯電話機やデジタルカメラなどの組み込み機器向けを想定し技術開発を重ねてきた。最大の特徴は、高性能PCやサーバなどと比べてCPUパワーの低い組み込み機器であっても、高精度、高ロバスト性、高速処理を実現できることだ。
また、「顔検出」「顔認証」「笑顔度推定」「視線やまぶた、口の開閉検出」「年代・性別推定」などを含めた16機能を商品ラインアップとしてそろえており、これらの機能を組み合わせることで、顔認証システム、デジタルカメラやスマートフォンのオートフォーカス機能、フォトプリンタの美肌補正、ユーザー属性に合わせたデジタルサイネージの表示、コミュニケーションロボットなどのアプリケーションに対応してきた。2009〜2022年4月の累計出荷ライセンス数は15億台以上になる。
今回発表した顔認証マスク対応版は、従来のOKAO Visionの顔認証機能では難しかったマスク着用状態での顔認証に対応した。対応可能なマスクとしては、不織布マスク(白、青)、ウレタンマスク(白、黒、グレー)を挙げているが、他の色のマスクや、柄入りの布マスクなどについても少し精度が下がるものの顔認証が行えるという。また、入退室管理システムなどの用途を想定していることから、正面や近距離から撮影された顔に特化して高い認証率を実現している。認証精度については顧客との守秘義務から非公開としたが、既に入退室管理システム向けの採用がほぼ決まっていることから、実用上求められる精度はクリアしているとみられる。
Cortex-A9クラスのプロセッサでも利用できる
マスク着用に対応する顔認証技術は、競合他社からも既に多数発表されている。オムロンがOKAO Visionの顔認証マスク対応版の特徴として強調するのが、エッジ端末側に組み込んで運用できる点だ。
顔認証システムの多くは、顔認証の処理や認証対象の顔データのデータベース管理を高性能のサーバ側で行うことが多い。この場合、初期投資や運用コストが高くなってしまうという課題がある。
主に組み込み機器向けに展開してきたOKAO Visionは、今回の顔認証マスク対応版についても、AIやディープラーニングの技術を搭載しながらも、認証対象となる顔データを基に学習した顔認証アルゴリズムをエッジ端末に組み込めるソフトウェア規模となっている。顔認証の速度についても、ミッドレンジ以上のWindows PCであれば50〜60msを確保しており、汎用小型ボードコンピュータの「Raspberry Pi 3」でも約1秒で認証できる。「周波数200M〜400MHz程度のArm Cortex-A9クラスのプロセッサでも利用可能だ」(オムロン)としている。
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