マスク着用時の顔認証を高精度化、富士通研究所がマルチ生体認証に新技術導入:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
富士通研究所は2021年1月21日、手のひら静脈認証技術と顔認証技術を組み合わせたマルチ生体認証技術について、新技術などを導入することで従来より利便性を高めたと発表。マスク着用時でも高精度で本人認証を実現する技術の開発や、静脈読み取り装置のインタフェース改善などに取り組んだ。
富士通研究所は2021年1月21日、同社の手のひら静脈認証技術と顔認証技術を組み合わせたマルチ生体認証技術について、新技術などを導入することで従来より利便性を高めたと発表した。マスク着用時でも高精度で本人認証を実現する技術を導入した他、静脈読み取り装置のインタフェースを改善して手をかざす際の“コツ”をつかみやすくした。
2種の生体認証技術を組み合わせて、大規模なユーザー認証を実現
手のひら静脈認証は、手のひらの静脈パターンを読み取って個人を識別する生体認証技術だ。認証の鍵となる静脈は本人の体内にあるので、盗難の恐れが極めて低い。さらに富士通研究所の開発した手のひら静脈認証は、他人受け入れ率(他人を本人と誤判断する確率)は0.00001%以下と高い認証精度を達成している。
顔認証技術はAI(人工知能)開発を進める中で培った深層学習技術をベースに開発した。他人受入率は0.001%以下で業界トップレベルの認証精度を実現している。本人の顔写真を使った他人のなりすましを防止する技術を取り入れており、第三者機関である米国立標準技術研究所(NIST)からの評価も受けている。
これら2つの生体認証技術を組み合わせて、さらなる高精度化を図るのがマルチ生体認証技術である。店舗の入退店時、あるいは商品の決済時に使う本人認証として活用することで、財布やクレジットカード、IDカードが必要ない“手ぶら”の施設利用を実現するという。
また、マルチ生体認証技術は、イベント会場や全国チェーンのコンビニエンスストアなど、大量の利用客が訪れる場所での導入にも耐え得るという強みがある。
富士通研究所 フェロー デジタル革新コア・ユニット ユニット長の増本大器氏は、「生体認証技術を使用する場合、あらかじめ利用者の生体情報をマスターデータとしてデータベースに登録しておく必要がある。しかし、利用者の数が増大するにつれて、読み取った生体情報と登録情報を照合するのに多大な時間がかかるようになる。他人受け入れ率も増加しかねないので、マスターに登録できるのは1万人規模が限度だ。しかし、2つの生体認証技術を組み合わせれば、顔認証の結果でデータベース内の該当者を絞り込んだ上で、手のひら静脈認証の結果でさらに絞り込み、最終的に本人を特定できるようになる。これにより、100万人規模のマスター登録が可能になる」と説明する。
マルチ生体認証技術は既に、富士通新川崎テクノロジースクエア内で開業した「ローソン富士通新川崎TS レジレス店」(神奈川県川崎市)に導入されている。同店舗はAIカメラや重量センサーなどを組み合わせてレジレスを実現するソリューション「Zippin」を導入しており、マルチ生体認証技術は入店時の本人認証に使われている。店舗入り口で本人認証を行うことで、店内で本人が手に取った商品と本人のひも付けを行い、退店時に自動決済を行うレジレスシステムを実現した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.