“製造業のため”のデータスペースを作る意義、「Manufacturing-X」が目指すもの:FAインタビュー(3/3 ページ)
欧州で進む“製造業のため”のデータスペースとして注目を集める「Manufacturing-X」。この「Manufacturing-X」を推進する企業の1社で主要メンバーとして参加するベッコフオートメーション COOのゲルト・ホッペ氏に話を聞いた。
製品とデータサービスを一体で提供するのが当たり前に
MONOist Manufacturing-Xを構築するために現在はどういう取り組みを進めていますか。
ホッペ氏 現在は主導メンバーを中心に基本的なユースケースのシナリオやソリューションを開発するための研究プログラムなどを進めているところだ。まずは、プラントソリューション(製造現場運営面)におけるデータスペースの在り方とその活用方法などを実際の使用環境を含めた形で検討している。その他、装置サプライヤー向けのためのものや新たなデータスペースを活用したビジネスモデルなどの検討も進めていく。
こういう議論をすると、Manufacturing-Xとしてデータスペースそのものをビジネスとするのかと聞かれるが、基本的にはデータスペースが製品の付加価値の1つになっていくと考えている。真のビジネスは製品そのものにあり、付加的サービスとしてこうしたデータスペースを活用した各種データサービスが付随するという形だ。
例えば、スマートフォン端末を購入するときにカメラありを選ぶであったり、通信技術が4Gと5Gであれば5Gを選ぶであったり、そういう製品スペックの選択肢の1つとしてデータスペースとの接続やデータサービスが入ってくる。製品と各種データサービスが一体となって価値を作るというものになる。いずれこうしたデータサービスが当たり前のものになったときに、データスペースとの接続機能がなかったらどうするかを考えた場合、製品価値で勝負できなくなるだろう。必ずこうした仕組みは必要になる。
MONOist ベッコフオートメーションの立場としてはこうした動きに対し、どういう取り組みが必要だと感じていますか。
ホッペ氏 こうしたデータスペースとのつながりを考えた場合、これらへの接続や機能を生かしていくためのオープンな技術の採用などの考え方が必要となってくる。
ただ、ベッコフオートメーションではもともと、PCベース制御ソフトウェアとして「TwinCAT」を展開し、PC上でさまざまな技術と組み合わせながら製造現場のさまざまな機器の高速で高精度な制御を可能としてきた。また最近では、PCベースである強みを生かし、TwinCATでインテグレートやプログラム、エンジニアリングなどの一連の工程を統合して活用できるような仕組みを整えてきた。ビジョンとの連携やAIとの連携なども進めてきており、これらをベースにデータスペースとの連携についても実現し、オートメーションに新たな価値を生み出せると考えている。
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