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“空飛ぶじゅうたん”を次の常識に、FAにオープン化をもたらすベッコフの10年FAインタビュー(1/2 ページ)

Beckhoff Automation(ベッコフオートメーション)は日本に進出してから10年を迎える。2011年の日本法人設立から10年間を率いてきたベッコフオートメーション(日本法人)代表取締役社長の川野俊充氏に、これまでの10年間と今後について話を聞いた。

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 産業用オープンネットワークであるEtherCATの開発企業であり、PCベース制御を展開するドイツのBeckhoff Automation(ベッコフオートメーション)は日本に進出してから10年を迎える。この10年間は、インダストリー4.0やスマートファクトリー化など日本のFA(ファクトリーオートメーション)の世界にも大きな変化をもたらした。その中で、日本の製造現場はどのように変化し、ベッコフオートメーションの取り組みはどのように進展してきたのだろうか。

 2011年の日本法人設立から10年間を率いてきたベッコフオートメーション(日本法人)代表取締役社長の川野俊充氏に、これまでの10年間と今後について話を聞いた。

「非常識を常識に」へ取り組んだ10年

MONOist ベッコフオートメーションは日本に本格進出して10年となります。この10年間を振り返って、どう感じていますか。

川野氏 10年を振り返ってあらためて感じるのは「非常識が常識になるには10年単位の時間がかかる」ということです。ベッコフオートメーションが日本に進出し、PCベース制御の提案を開始した当時は、日本ではPCベースでさまざまな製造機械を制御するというのが一般的ではなく、疑いの目で見られることも多くありました。ただ、ベッコフオートメーションは1986年からPCベース制御のコンセプトを訴えており、日本法人を設立した時点でも25年の歴史がありました。欧州での数多くの実績を含めてもこうした流れに進むという確信がありました。

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ベッコフオートメーション(日本法人)代表取締役社長の川野俊充氏

 今では大手のFAメーカーのほぼ全てがPCベース製品を扱うようになり、PCベース制御に疑いを持つような話はなくなってきています。半導体の進化があることも大きく、従来は難しいと思われていたことが安定してできるようになった技術的な背景もあります。こうした流れを振り返ると、日本でのベッコフオートメーションでの10年の取り組みはこうした「非常識を常識に」するための活動だったと感じています。

 同じように「非常識を常識に」という取り組みの中では、ドイツの「インダストリー4.0」の紹介を通じたモノづくりの革新の動きなども同様だと考えます。ベッコフオートメーションは、ドイツのインダストリー4.0の活動にも積極的に参加しているため、こうした動きとそれをもたらす変化について、日本でもさまざまな紹介を行ってきました。その中では競争領域と協調領域を切り分けて、協調領域は標準化を進めていくという動きが重要なポイントですが、当時はこの標準化が「モノづくりの競争力をそぐのではないか」という懸念があり、不安感が強くありました。

 しかし、今では「協調領域については標準化を進めた方がみんな助かる」というコンセンサスが生まれ、実際にそういう動きも増えてきています。誰がこの標準化を作るのかという部分や、標準上の個別環境では競争領域はありますが、標準化に否定的な話はなくなってきました。これも、欧州やドイツでは標準化が常識で戦略の一部になっていたのに対し、日本では標準化が非常識だったという状況を変えようと取り組んできた動きです。こうした取り組みを進める中で得られたコミュニティーが今の礎になっています。

トヨタでのEtherCAT採用が追い風に

MONOist 最初は苦労したということでしたが転機だと感じているのはどの時期でしょうか。

川野氏 いくつかありますが最も大きかったのは、2016年のトヨタ自動車(以下、トヨタ)がEtherCAT採用を発表したときだったと感じています。EtherCATそのものは推進団体であるEtherCAT Technology Group(以下、ETG)が推進していますが、ベッコフオートメーションはEtherCATの開発メーカーですので「ベッコフオートメーションの技術がトヨタに認められた」ということが日本で認識してもらえるようになりました。従来は、営業提案にいっても、ベッコフオートメーションの説明に長い時間が必要でしたが、前置きなしに話ができるようになりました。

 日本法人として本格的に軌道に乗り始めたのが、10年間のちょうど中間地点だということになります。それ以降は、最先端の課題に取り組む顧客と、PCベース制御や従来にない新たな手法や製品に取り組むような案件が増え、パートナーにも恵まれるようになりました。例えば、その取り組みの1つとしてマルチモーダルAIロボットなどがあります。これは、多指ハンドを装着した双腕型ロボットアームを、ディープラーニングで得たアルゴリズムによってリアルタイムで制御するAI(人工知能)ロボットで、デンソーウェーブやエクサウィザーズなどと共同で「2017 国際ロボット展(iREX2017)」で公開したものです。その後、デンソーウェーブが2021年4月にこの技術の一部を活用した「AI模倣学習」を製品化しています。

 こうした「未開の地」を共に開拓するような新たな挑戦を相談されることが増えており、非常にやりがいがあります。

MONOist 「非常識を常識に」ではないですが、ベッコフオートメーションでは以前から個々の製品だけではなく実現したい世界をテーマにした発信の多いことが印象的でした。

川野氏 そうしないと価値が訴求できないという面もありました。I/Oなど、カタログ比較だけになると、スペックと価格のみの勝負になります。そういうところではベッコフオートメーションの製品が持つ本当の価値は発揮できないと考えていました。当然ながら製品や要素技術の進化は追求していきますが、日本での存在意義は、従来の日本にない価値をもたらすことだと考えています。そういう意味では「今まではできなかったことができるようになる」という世界を一緒に描き、一緒に作り上げていくような取り組みが重要になると考えています。

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