無色透明で液ダレしない高粘性液を作れる新CNFパウダー、体積は従来品の50分の1:材料技術(2/2 ページ)
大阪大学 産業科学研究所は、水に混ぜると無色透明で液ダレしない液体を作れるセルロースナノファイバーパウダー「TEMPO-CNF」を開発した。
CNFの動向と4つの従来技術
木材を原料としたパルプから作られるCNFの価格は現在、樹脂補強剤としては炭素繊維複合材料(CFRP)やガラス繊維強化樹脂(GFRP)より高いが、増粘剤としてはカルボキメチルセルロースやキサンタンガムとキサンタンガムと同等だという。
CNFの世界市場規模は、2022年実績は生産量が80トン(t)超で60億円となり、2025年には生産量が120t近くに達し70〜80億円になる見込みだ。
これまでレオクリスタでCNFパウダーを作成する手法として「オーブンで乾燥」「オーブンで乾燥し、強力な攪拌を行う」「分散剤を混ぜてオーブンで乾燥」「凍結して昇華」の4つがあった。オーブンでレオクリスタの水分を沸騰させ乾燥する手法で作ったCNFパウダーは、水に溶かすとチキソトロピー性がない白濁した液体になってしまう。
オーブンでレオクリスタの水分を沸騰させ乾燥させて作ったCNFパウダーを水に溶かし強力な撹拌を行うと透明な液体になるが、CNFの構造が切断されるため低粘性となる。レオクリスタに分散剤(水溶性ポリマー)を混ぜてオーブンで沸騰させ乾燥させたCNFパウダーは、乾燥時にCNFの粒同士が凝集しないため、透明な液体になるが、凡庸な粘性しか発揮しないという。
レオクリスタを凍結乾燥させて作成したCNFパウダーは水に加えると、透明した液体になり、チキソトロピー性のある液体になるが、パウダー状態時に空気を多く含むため、体積が大きくなるだけでなく、静電気を帯びやすく扱いにくい。こういった手法を踏まえて、大阪大学 産業科学研究所の能木氏は、エタノールを溶媒に活用しレオクリスタを蒸発させて、作成するTEMPO-CNFを開発した。
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