植物由来のセルロースナノファイバー利用促進を目的に原料評価書を公開:FAニュース
新エネルギー・産業技術総合開発機構が「セルロースナノファイバー利用促進のための原料評価書」を公開した。植物由来の新材料が工業用原料としても広く活用されるよう、性質や製品に利用した場合の適性などをまとめた。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2020年3月26日、木質系バイオマスの効率的選択を支援するため、「セルロースナノファイバー利用促進のための原料評価書」を公開した。
NEDOは、石油由来化学品原料からの転換やCO2排出量の削減を進めるため、非可食性植物由来化学品の製造プロセス技術を開発している。
非可食性バイオマスから最終化学品までの製造プロセス開発において、セルロースナノファイバー(CNF)は、製法の違いによって形態や性状が異なる多様なCNFが生産されるため、通常の工業材料のように扱えない、利用しづらいという課題があった。
NEDOは、複数の研究機関、企業と共同で木質系バイオマス原料の物性と、パルプ化、CNF化した原料の特性を明らかにした。さらに、原料と関連させながら、CNFの性質を系統的に原料評価書にまとめた。同評価書には、CNFを利用する増粘剤、ゴム、プラスチックなどの製品メーカーが実施したCNF適性評価の結果も掲載している。
NEDOは、原料、パルプ、CNFの特性と、さまざまなCNFを製品に利用した場合の適性を示した同評価書を公開することで、CNFを製造、利用するメーカーが効率的に原料を選択できるよう支援する。さらには、木質系バイオマスの工業用途での普及を目指す。
なお、同評価書は、森林研究・整備機構森林総合研究所、産業技術総合研究所、東京大学、京都大学、京都工芸繊維大学、大阪大学、東京工業大学、スギノマシン、第一工業製薬、三菱鉛筆と共同で作成した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- AIでAIのための新材料が見つけられるのか、長瀬産業の取り組み
エレクトロニクス製造および実装技術の展示会である「インターネプコン ジャパン2020」(2020年1月15〜17日、東京ビッグサイト)の特別講演に、長瀬産業 執行役員 NVC室室長の折井靖光氏が登壇。「マテリアルズインフォマティクスプラットフォームの開発〜AIは新材料を見つけることができるのか?〜」をテーマに講演した。 - 目に見えない世界との戦い――材料・化学
新材料開発におけるCAEは、特にナノレベルの目に見えない世界を可視化できることも強みだ! - 試作材料選びがサクッとできる標準化で無駄をなくそう
ママさん設計者と一緒に、設計実務でよく用いられる機械材料の基本と、試作の際に押さえておきたい選定ポイントと注意点を学んでいきましょう。最終回は、試作における材料選びの標準化について考えていきます。 - 全固体電池はマテリアルズインフォマティクスで、変わるパナソニックの材料研究
マテリアルズインフォマティクスによって二次電池や太陽電池の材料開発で成果を上げつつあるのがパナソニック。同社 テクノロジーイノベーション本部の本部長を務める相澤将徒氏と、マテリアルズインフォマティクス関連の施策を担当する同本部 パイオニアリングリサーチセンター 所長の水野洋氏に話を聞いた。 - 蓄電池材料の探索におけるマテリアルズ・インフォマティクス
蓄電池の材料を探索する方法として、ビッグデータやAIを応用したマテリアルズ・インフォマティクスからのアプローチが増えつつある。ダッソーの講演でハイスループット計算やベイズ最適化を適用した機械学習の適用例が語られた。 - 機械学習による逆問題への対処法、材料配合や工程条件を最適化せよ
製造業が機械学習で間違いやすいポイントと、その回避の仕方、データ解釈の方法のコツなどについて、広く知見を共有することを目指す本連載。第2回は、製造業で求められる材料配合や工程条件の予測に必要な、機械学習による逆問題への対処法ついて取り上げる。