利用回数は想定の5倍超、ChatGPT全社導入から3カ月でのパナソニック コネクトの利用実績:製造ITニュース(2/2 ページ)
パナソニック コネクトは2023年7月3日、OpenAIの大規模言語モデル(LLM)をベースに開発、導入したChatGPTライクのAIアシスタントサービス「ConnectAI」の活用実績と今後の展開について発表した。
利用満足度は5点満点で平均4.1点に
ConnectAIには社員による不適切利用を防ぐためにコンテンツフィルターが設定されている。フィルター上では合計84回の不適切利用が検出されたという。ただ、不適切利用の内容は「電気分野での自殺回路の意味を教えてほしい」など、質問の一部用語が不適切と判断されたケースがほとんどで、重大な過失につながりかねない不適切利用は確認されなかったとする。
ConnectAIには質問への回答に対する満足度を社員が評価する仕組みがある。3カ月間の平均満足度は5点満点中3.6点となっている。GPT-3.5のみを提供していた時期は同2.8点だったが、ChatGPTを提供し始めてからは同3.8点と大きく上昇した。GPT-4の提供開始以降は4.1点になり、モデルの性能向上が満足度に影響している様子が伺える。
向野氏は定量的な業務改善効果も紹介した。プログラミング業務のコーディング前に行う調査業務では、従来3時間かかっていた業務が5分で終わるようになったという。自社拠点それぞれの緯度や経度の情報を収集するという業務だが、これを36分の1の時間で実施できるようになった。社内広報業務でのアンケート結果分析でも成果が出ている。これまでは1500件のアンケート分析に9時間を要していたが、これが6分と大幅に短縮可能になった。
カスタマーサポートへの適用も計画
向野氏は「ConnectAIを運用する中で、ChatGPTを業務に活用する上での課題も見えてきた」と語る。具体的には「自社固有の質問には回答できない」「回答の正確性を担保できない」「長いプロンプトの入力が手間」「最新の公開情報は回答不可」といった問題だ。
パナソニック コネクトはこれらの課題を解決するためのプロジェクトに順次着手している。その1つが、自社の公開データをConnectAIと連携させて有効性を検証するプロジェクトだ。「自社固有の質問には回答できない」「最新の公開情報は回答不可」といった問題の解決を目指し、2023年6月に立ち上げた。自社Webサイトや2017年以降のニュースリリースなど、インターネット上で確認可能な同社のデータをConnectAIに連携させる。2023年9月から試験運用を開始する予定だ。
質問をConnectAIに送信すると、公開データを格納した自社データベース内から回答候補の単語や文章をプロンプトに自動的に追加して、これを加味した上でLLMが回答を作成するという仕組みになっている。
例えば、「パナソニック コネクトのプレジデントは誰か」という質問を単に投げかけてもChatGPTは回答できない。ChatGPTの学習データが構築されたのは2021年9月で、パナソニック コネクトが誕生した2022年4月の知識を持ち合わせていないからだ。しかし、自社データベースを参照することで、「樋口泰行 代表取締役 執行役員 プレジデント」といった情報を自動検索できるようになる。
また、自社データベースの検索結果を基に作成した回答は、情報のソースとなるURLも表示される。このため、「回答の正確性を担保できない」という問題もある程度解決できるという。
今後は社外秘情報にも対応する自社特化AIを2023年度内に、個々人の職種や役割に応じた個人特化AIを2024年度以降にそれぞれ運用開始する予定だ。データとConnectAIを連携させることで、自社業務への適用範囲も拡大する。2023年10月以降に、保守/運用業務向けの効率化や回答の迅速化を目指してカスタマーサポート向けを展開していく計画もある。
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