ユニバーサルロボットが見る協働ロボットの未来、自動化に関する5つの潮流と展望:協働ロボット(2/2 ページ)
ロボットの技術進化が進む中、製造現場には今後、どのような変化が生まれていくのか。協働ロボット大手ユニバーサルロボット 戦略・イノベーション担当バイスプレジデントのアンダース・ベック(Anders Beck)氏の考察を掲載する。
3. ロボットの大型化でアプリケーションが拡大
協働ロボットを活用した自動化を進める企業が増える中で、人の力では扱うのが難しい重量物の搬送作業も協働ロボットに任せたいとの要望も現れてきました。具体的には重量物のパレタイジングや、搬送、加工機へのワークの脱着などです。
最近、より高い可搬重量と長いリーチを持つ協働ロボットが各社から発表されていることは朗報です。これからは、これらの協働ロボットが製造業の業務を変革し、多くの作業員の働き方をよりよいものにすることでしょう。
4. ますます増えていくロボット
最近のIFR(国際ロボット連盟) World Robotics Reportによると、2021年の産業用ロボット設置台数は51万7385台と前年比31%増で史上最高を記録しました。全体として、2015年から2021年にかけて世界の年間ロボット設置台数は2倍以上になっています。2022年の成長は産業全体で鈍化しているようですが、これはパンデミックや電子部品の入手難に端を発した世界的な不透明感によるところが大きいと思われます。
協働ロボット市場については2023〜2026年までCAGR20%強の高成長を続け、2026年には市場規模が22億米ドル(約3000億円)を超えると予測されています※1。高成長の要因は、すでに協働ロボットの導入が進む自動車、電機電子業界に加え食品、飲料業界など新たな業種での導入が進み、多くのベンダーが参入して協働ロボットの認知が広がることなどです。
地域別にみると、従来は協働ロボットが誕生したヨーロッパから導入が進み、次いで北米、アジアに広がってきましたが、中国市場が急成長しており、2021年以降は世界市場における中国市場のシェアが50%を超えたようです。
欧州では自動車や金属加工業での採用が多い一方で、アジアではエレクトロニクスや新エネルギー分野での採用が多くなっています。北米では、協働ロボットの導入はさまざまな業種で比較的均等に進んでいるのが特徴です。。その中で比率が高い産業は自動車産業とサービス産業で、さらに、食品、飲料や化学薬品分野でも導入が進んでいます。
引き続き、協働ロボットを活用した自動化が上昇トレンドになると予想されます。なぜなら、世界中の企業が労働力とスキルの不足に直面している現在、人間がロボットと一緒に働くことで、より人間中心の持続可能で変化に強いビジネスが生まれる「インダストリー5.0」への移行の真っ只中であるためです。
※1:Interact Analysis 社、The Collaborative Robots 1H 2022 より
5. ユーザーの声が製品開発の中心に
現場におけるロボットとのコラボレーションについてはよく話題になりますが、イノベーションの原動力となるのは“人と人のコラボレーション”です。
自動化を推進している企業は、自らのニーズを誰よりも理解しています。オートメーション市場の成熟に伴い、彼らはどういったソリューションが必要か、というニーズをこれまで以上に強く表明できるようになりました。これは、ロボットメーカーが製品開発段階で、よりエンドユーザーを巻き込めるようになったことを意味します。
ユニバーサルロボットが製品開発チームを再編成し、ソリューションの設計前にエンドユーザーが直面している課題を理解することに重点を置いているのは、このためです。また、ロボットメーカーと装置メーカーが共に特定のソリューションを開発する共同プロジェクトも、今後さらに増加することが予想されます。
重要なのは、自動化を進める企業が導入するソリューションのコンセプトや仕様に直接影響を与えることができるようになり、同時にロボットメーカーにとっても貴重なフィードバックが得られるため、業界全体の利益につながるソリューションを提供することができるようになるということです。
今後はこれまで以上に、企業は市場で存続、成長していくために絶えずイノベーションを起こし、変化に対応し続けなければなりません。2023年以降、ターンキーソリューションといった新たな手段で新境地を切り開くために、かつてないほどテクノロジーやイノベーションの力が必要になり、自動化は今後もますます進んでいくことが予想されます。
関連記事
- ユニバーサルロボットは成長継続に自信「協働ロボットは不確実な時代にこそ必要」
ユニバーサルロボットが、新たに開設した日本オフィス(東京都港区)で記者会見を開催。来日したユニバーサルロボット 社長のユルゲン・フォン・ホーレン氏が同社の事業戦略について説明し、併せて報道陣向けに新オフィスのトレーニング室とアプリケーション室を公開した。 - ユニバーサルロボットが送り出す第3世代の協働ロボット、製造工程なども見直し
ユニバーサルロボットは「FOOMA JAPAN 2023」において、最大可搬重量20kgの協働ロボット「UR20」によるパレタイジングのデモンストレーションを披露した。 - 誰でもすぐにロボットエキスパート、欧州ハンドメーカーが自動化展開基盤を投入
スウェーデンのOnRobot(オンロボット)は日本国内で2023年1月から提供を開始した産業用ロボットおよび協働ロボットの自動化展開プラットフォーム「D:PLOY」に関する記者会見を東京都内で開いた。 - 事例で振り返る協働ロボットの使いどころ
成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。第14回では、「使いどころを探すのに苦労する」という声の多い協働ロボットについて、実際の事例をベースに紹介します。 - 人手不足対策で完全自動化は逆効果、人とロボットの協力をどのように切り開くか
人手不足に苦しむ中で、工場でもあらためて自動化領域の拡大への挑戦が進んでいる。その中で導入が拡大しているのがロボットである。AIなどの先進技術と組み合わせ、ロボットを活用した“自律的な全自動化”への取り組みも進むが現実的には難易度が高く、“人とロボットの協調”をどう最適に実現するかへ主流はシフトする。 - 協働ロボット、ロボットシステムに残された課題と未来
協働ロボットを現場で活用するのにどのような工夫が必要か――。ロボット技術の総合展示会「2017国際ロボット展」では、ロボットメーカーおよびユーザー企業によるパネルディスカッション「ロボットフォーラム2017」が実施され、協働ロボットの意義について語った。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.